宇都宮ブレックス・比江島慎 無得点の2週間前から何が変わったのか
(Bリーグ1部チャンピオンシップ準々決勝第1戦、宇都宮81―70千葉)
「比江島慎が、かえってきた」
宇都宮ブレックスの安斎竜三ヘッドコーチに笑顔がこぼれた。
千葉ジェッツのホーム、船橋アリーナは4355人の観衆で埋まった。敵地での難しい試合を宇都宮が勝ち切れたのは、31歳の東京五輪代表による両チーム最多21得点の活躍が大きかった。
比江島は今シーズン1試合平均11・5得点。悪い数字ではないが、この大舞台でさらに力を発揮した。3点シュート3本に、切れ味鋭いドライブからの得点。内外から比江島らしい独特のリズムで得点を重ねた。
4月30日の千葉戦で比江島は24分出場しながら無得点に終わっていた。
あの時から何が変わったのか。
「もう開き直って。相手のホームなので、強気にいく。1本目が外れても打ち続けようと思った。周りを生かすのではなく、自分を生かす。それで相手が寄ってきたら周りを生かすという気持ち。いい状態でやれた」
比江島は振り返る。
安斎ヘッドコーチは無得点に終わった千葉戦のもどかしさが、比江島が攻める姿勢を取り戻す契機になったと見る。
「セルフィッシュというか、自分第一になってやり出した。それが僕らが望む比江島慎です。やっとかえってきてくれた」
去年はチャンピオンシップ(CS)決勝で千葉に1勝2敗で負けていた。「その悔しさだけをぶつけた」と比江島はいう。
相手エースの富樫勇樹が第3クオーターに13点を決めると、比江島も負けじと9点を返した。エース対決で主導権を渡さなかった。
「富樫が乗ってきたら、あのチームは乗ってくる。耐えなきゃいけない時間帯だった。しっかり耐えて、リズムを作れたのはよかった」
田臥勇太や竹内公輔というベテランが下支えする宇都宮は全員が泥臭く守備に走り、こぼれ球に体を張る。比江島の活躍以外にも、2年目の荒谷裕秀が14得点と輝いた。短期決戦を勝ち上がるのに不可欠な「ラッキーボーイ」も誕生するという理想的な1勝だ。
「誰のおかげで勝ったということではない。全員がヒーロー」
安斎ヘッドコーチは全員バスケを強調する。
チームは準決勝進出に王手をかけたが、一切気の緩みはない。
「相手がこのまま終わるわけがない。きょう以上のエナジーで来る。僕自身は(去年の)あの負けの悔しさを持って1年間やってきた。同じCSの舞台でやり返したいと思っています」
比江島は誓う。
宇都宮が昨季の雪辱を果たすのか。千葉が五分に戻すのか。第2戦は15日、ティップオフ。(野村周平)