高齢化やコロナでピンチの朝市 生き残り策続々

杉村和将
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 【岩手】早起きして朝市に出かけると、地元の食材や人との出会いに心が躍る。東北各地にあるそんな「庶民の台所」が、にぎわいづくりに苦慮している。売り手の高齢化で出店者が減っているところに、コロナ禍も直撃した。活気を取り戻すための秘訣(ひけつ)はあるのだろうか。

 秋田県五城目(ごじょうめ)町で開かれる「五城目朝市」。3月下旬に訪ねると、早くも山菜がお目見えし、近くの海でとれたメバルやカレイも並んでいた。30年前から野菜を出しているという女性は客に調理法を教えながら、「ここは相手の顔が見えていい」と話した。

 朝市は500年以上の歴史がある。だが、運営する五城目町によると、近年は出店者と客が減少している。訪れた日も季節の野菜や山菜の本格シーズン前とはいえ、日曜日でも人の姿はまばらだった。

 岩手県久慈市の朝市「久慈の市日」も約400年続く生活市だ。歩道に魚や野菜、果物が並び、周辺住民が訪れるが、朝市の組合で副会長を務める岩崎ユキ子さん(68)は「昔はもっと混み合ったんですよ」と寂しがる。出店者の多くが高齢で引退。一方、周囲にスーパーや産直ができ、訪れる人が減ったという。

 「東北朝市紀行」の著書がある千葉市在住の池田進一さん(57)は、五城目を訪れて朝市の魅力を知り、東北各地の26カ所を巡った。「朝市には風土の味と人の優しさがある。生活様式が変わっても残り続けてほしい」と願う。

 朝市のにぎわいは、どうすれば回復するのか。

 青森県八戸市の港で開かれる「館鼻(たてはな)岸壁朝市」は国内最大規模の市で、多いときで300を超す店が並ぶ。客はここ数年、コロナ禍で半分~3分の1程度に減っていたが、最近は県外からの客も戻ってきた。5月の大型連休中は、コロナ禍前の1日約4万人には及ばないものの、2万人以上が来場したという。

 もともと別の場所で続いていたが、歩道で開いていたため手狭で、車と接触する危険や駐車場不足などの問題もあり、2004年に現在の岸壁へ移った。安全に買い物できるようになると地元客でにぎわい、それが話題になって観光客を呼び寄せた。

 朝市会相談役の上村隆雄さん(69)は「地元の人に支持されないと長く続けることは難しい」と言い、お手頃品をそろえた生活市の雰囲気を大事にしているという。

 盛岡市の神子田(みこだ)朝市も、活気を取り戻した市だ。数年前まで出店者も客も高齢者が多く、後継者がいないままやめていく店もあった。

 転機になったのは一昨年3月。組合の役員が世代交代したのを機に、新規出店者を募集したところ、飲食店を中心に希望者が集まった。

 ホットサンドや牛タンカレーを販売する店を構える松田旭さん(55)は、コロナ禍で営業が厳しくなりつつあった運転代行業から転職した。「屋内ではなく風通しがいい。ここはいいかも」と可能性を感じた。

 市には最近、家族連れやカップルが増え、週末には以前の3~4倍の約2千人が訪れる。年300日開かれるが、人の往来が絶えない。

 組合長の吉田晃さん(51)は言う。「魅力がなければ、お客さんは来てくれない。朝市も時代に合ったものを取り入れ、改革しなければ」(杉村和将)