アナザーノート 木村裕明編集委員
定年退職を事実上、廃止した企業が北陸にある。社員は60歳でいったん定年を迎えるが、その後も原則として無期限で働ける。退職金は60歳の定年時に加え、本人が希望して雇用関係が終わる時点で2度目をもらえる。金沢市に本社を置き、化学品や車載向け樹脂製品などを扱う創業九十余年の老舗商社、三谷産業(東証プライム上場)の取り組みで、昨年2月の記事で取り上げた。
ユニークな継続雇用制度は、三谷忠照社長の肝いりで導入された。一口にシニア社員と言っても、孫の世話をしている人や老老介護をしている人、学び直しをしている人など様々な事情がある。定年前と同じ仕事を続けたい人もいれば、働き方を変えたい人もいる。
ニュースレター「アナザーノート」
アナザーノートは、紙面やデジタルでは公開していないオリジナル記事をメールで先行配信する新たなスタイルのニュースレターです。今回は5月15日第90号をWEB版でお届けします。
三谷社長は当時の記者会見で、超高齢社会を迎える日本で、企業風土を築いてきたシニアを大切にし、社員一人ひとりがそれぞれの事情にあわせて「ちょうどよい働き方」をデザインできる「新たな終身雇用」をめざすと宣言した。
「定年を廃止して、居座られたらどうするのか」。新制度に対して否定的な見方をする経営者もいるが、三谷社長の考えは違う。
退職のあいさつを聞くたびに
「甘いと言われるかもしれま…
【10/25まで】すべての有料記事が読み放題!秋トクキャンペーン実施中!詳しくはこちら