(魂の中小企業)落ちこぼれが東大生家庭教師、そして教育起業家に
テレビドラマ「ドラゴン桜」を見た方、いらっしゃると思います。
世の中からバカにされている無名の高校、その生徒たちが、ぜったい東大に合格するという強い動機のもとで勉強し、学び合います。その結果は……、という物語でした。
東京に「トモノカイ」という会社があります。東大の家庭教師サークルを母体に、2000年に設立された会社です。
難関大を中心にした大学生約25万人を、家庭、高校、塾などに派遣し、それぞれの目標に導く事業をしています。派遣先の高校などで、「ドラゴン桜」に似たことをすることもあるのだとか。
大学生と派遣先とをネットで結びつけ、こんな大学生に教えてもらいたい、こんな生徒を教えたいとお互いの相性を重視します。
たとえば、東大を目指している生徒でも、いろいろ家庭の事情をかかえていたり、公立の高校に通っていたりします。そんな生徒のところに、有名私立一貫校をでた東大生を派遣しても、おそらく、うまくいきません。だから、いろいろな問題を乗り越え、公立高校から東大に入った学生を派遣します。
受験に向けた勉強を教えるだけではありません。学校の放課後にSDGsやグローバル化の授業をするなど、大学生たちの工夫によるユニークな授業をしています。
この会社の社長は、徳岡臣紀(しげき)さん、41歳。彼の半生をひもときます。
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青森の十和田湖ちかくに生まれた。父は転勤の多い公務員。小学校の低学年のころ、いつも立場は転校生で、クラスメートの輪の中に入れない。くわえて、運動が超苦手。勉強は、九九でつまずいて落ちこぼれた。教師たちに言われた。「徳岡くん、大丈夫か?」
少年は悩んだ。
〈どうせ、ボクはこのまま大人になっていく。ボクの人生って、意味があるの?〉
悩みつづけて小学4年生になった。
家に科学の雑誌があった。何げなく広げたら、宇宙を特集していた。難しくてよく分からなかった。でも、少年の心に、大きく突き刺さったことがあった。
宇宙は大爆発からできたのだ!
少年は、思った――
この宇宙に比べたら、ボクの悩みなんか小さいことだ。ボクは、人と自分を比較してきた。そして、できないことを探し、自分はダメな人間だと思ってきた。
ばっかばかしい。
ゼロからの大爆発で、宇宙はうまれた。ボクはいまはゼロかもしれないけれど、興味があることを学べば、ボクの可能性は広がるかもしれない――。
札幌の小学校に転校した徳岡は、クラスのムードメーカーになった。いたずらの度がひどすぎる、と何度も職員室に呼び出された。勉強もするようになった。
公立中学の生徒となり、塾に通うようになった。その塾は、全国に100カ所ほどの教室を展開していた。札幌の中心など大都会の教室には、スペシャルクラスがあった。ところが、徳岡の住まいは札幌のはずれ。通っていた教室には、ふつうクラスしかなかった。
ある日、教室で徳岡ら生徒は話し合った。
「なぜ、僕たちの教室にスペシャルクラスがないんだ?」
「金持ちの地域にあって、ぼ…