唐代の書にも「有芯筆」の特徴 正倉院の宝物から王羲之の筆に迫る
米田千佐子
書聖と言われる王羲之(おうぎし、303~361)の「蘭亭序」を写した墨跡や唐代の書の大家は現代の筆とは違う、芯のある筆(有芯筆〈ゆうしんひつ〉、巻筆〈まきふで〉)で書いていた――。聖武天皇から役人まで、奈良時代に多くの人が手本にした中国の書の筆事情が正倉院の宝物から明らかになった。真跡の残っていない王羲之の筆に迫る研究は書道史にも大きな影響を与えそうだ。
「筆先のバネがすごい」
国学院大学准教授の橋本貴朗さん(書道史)が、3月末に刊行された「正倉院紀要第44号」で発表した。
正倉院に残された18本の筆は観賞用と見られていたが、17本のX線調査や筆の試作を経て、実用性のある有芯筆だと昨年発表された。有芯筆は芯に紙を巻き、仕上げに毛をまとわせる。
試作で有芯筆による字の特徴…