「猿新聞」、190号で終刊、発信は継続 三重・名張

吉住琢二
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 サルやシカなどによる獣害の情報や対策を三重県名張市内で発信してきた「猿新聞」が4月の通算190号で終刊となり、発行元の名張鳥獣害問題連絡会に、市からユニークな取り組みをたたえる認定証が贈られた。終刊の理由は会員の高齢化などだが、代表の古川高志(たかゆき)さん(80)は「新聞が終わってもサルの情報を伝えていきたい」と活動継続への意欲を話している。

 古川さんとニホンザルとの出会いは20年前。市内の住宅団地内にある自宅の部屋がある日揺れ、地震かと思って外に出ると、屋根の上でサルが家庭菜園で育てたカボチャを食べていた。

 「こんな住宅地にサルが!?」と驚いた古川さんは、県などがブドウ園関係者ら向けに開いた獣害講習会に参加。そこで、県内のNPO法人「サルどこネット」の活動を知った。サルに発信器を付け、市民が受信機で得た群れの位置情報を携帯メールやホームページで共有し、地域での追い払い活動などでサル被害を予防しようという取り組みだ。

 古川さんは受信機を買い、仕事が休みの週末に車を何時間も走らせてサルの群れを探し、情報をネットに送った。2011年には関心を持つ仲間と名張鳥獣害問題連絡会を発足。ネットの情報を地域の人にも知ってもらおうと、個人で情報紙を書いていた仲間の協力を得て、名張周辺の群れの動向や獣害対策などの記事をA3判の表裏に載せた月刊紙「猿新聞」の発行を始めた。被害の多い地域を中心に無料配布し、部数は約1600部に増えた。

 この活動に対して市は先月、驚くような市民活動を表彰する「あれっこわい認定制度」の第12号として認定した。

 名張周辺ではA群、B群などと呼ばれる複数のサルの群れが移動しながら生活している。行政による捕獲などで以前に比べると農業被害などは減ったというが、4年前には古川さんが住む団地内で中学生がサルに足をつかまれ軽傷を負う「事件」も起きている。

 連絡会の会員は数人になったが、古川さんは今も群れの追跡を続けている。長年の観察で、決まった木の実などのえさを食べる場所や時期が分かり、移動経路も予測できるようになったという。そんな経験を生かしてネットへの情報送信を続けるとともに、地元の小中学校には団地に出没するサルの危険情報を提供したり、市民向け講習会を開いたりしている。

 古川さんは「サルなどの獣害が増えた一因は、里山が荒れて動物と人間の間の緩衝地がなくなったこと。捕獲だけでの解決は難しく、人とサルが距離を保って共存するしかない。そのためにも群れの追跡を続けます」と語る。(吉住琢二)