ロシアに見る「安易な改憲」の危うさ ウクライナ侵攻の布石だったか

「論座」編集長・松下秀雄
[PR]

 2020年のロシア憲法改正で加えられた条項には、ウクライナ侵攻への布石とも受け取れるものが見受けられる……。

 「論座」(https://webronza.asahi.com/別ウインドウで開きます)で5月2日に公開した「安易な憲法改正がいかに危ういか、ロシアを見れば明らかだ」(国分高史・元朝日新聞編集委員兼論説委員)は、そう指摘しています。

 たとえば、ロシアは千年の歴史によって団結するという条項は、「ウクライナ人とロシア人は歴史的に一体だ」とするプーチン大統領の考えの反映のように読める。国外で暮らす同胞の権利を守るという条項は、ウクライナ侵攻の口実とされた親ロシア派住民の保護を指すかのようだ。祖国防衛の功績をおとしめることは認められないとし、愛国心を前面に打ち出している――といった指摘です。

 プーチン氏は改憲の際、本来不要な「全ロシア投票」を実施し、8割近い賛成を得ました。ナショナリズムをあおって支持を集めようとしたのかもしれません。改憲項目には最低賃金の水準の保障のように歓心を買いやすい内容も含まれています。

 そしてプーチン氏が2036年まで続投可能になる条項も盛り込み、論点ごとではなく、まとめて賛否を問いました。運動のルールなどを定めた国民投票法を適用せず、数々の投票不正も指摘されました。「悪い改憲」「悪い国民投票」の見本のように思えます。

 むろん日本を同列に論じることはできません。けれど、共通の危険性もあります。憲法に縛られる権力側が主導する改憲は、「好きに権力を振るわせろ」という内容になりがちなもの。どう歯止めをかけるのか。戦争に行き着いたロシアを反面教師に、考える必要がありそうです。

      ◇

 上記の論考はこちらから(https://webronza.asahi.com/politics/articles/2022042700007.html別ウインドウで開きます)。論座ではほかにも、「まっとうな憲法報道に向けて 日本の立憲主義の課題は何か」(長谷部恭男・早稲田大学教授 https://webronza.asahi.com/journalism/articles/2022042500003.html別ウインドウで開きます)をはじめ、多様な憲法関連の論考を公開しています。

 朝日新聞デジタルのプレミアム・ダブルコースと論座会員は、論座で公開している2万の全論考をお読みいただけます。(「論座」編集長・松下秀雄

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【10/25まで】すべての有料記事が読み放題!秋トクキャンペーン実施中!詳しくはこちら