愛弟子の大露羅が涙目で見つめた土俵 かなわなかった北の湖親方の夢
抜井規泰
がんの再発がわかった北の湖親方。重粒子線をあてる最新治療も受けたが、全身がむしばまれていった。
「これだけは順番じゃないから。交通事故もあるし、心臓マヒもあるし」
62歳の誕生日だった2015年5月16日、まるで近い運命を悟るように、そう漏らしていた。
8日後の千秋楽。体力が落ち、もう階段を上がることすら難しかった。渾身(こんしん)の力で持ち上げた29キロの賜杯(しはい)。弟子の大露羅は、師匠の姿を西の花道から見守っていた。
この場所で優勝したのは、関…