ある新型コロナウイルスワクチンに対し、世界保健機関(WHO)が、国際的な流通に必要な手続きをストップしている。
このワクチンは、日本企業も関わって開発された。門前払いの形となった対応の背景には、WHOの譲れない一線があった。
話題として取り上げられたのは、カナダの企業メディカゴ社が作ったワクチン「コビフェンツ」。同社の株式の79%は親会社にあたる田辺三菱製薬(大阪市)が保有する。
ワクチンは、タバコ属の植物の葉にコロナウイルスの遺伝子を組み込んで、ウイルスの構造を模した物質を作製。この物質を注射することで免疫反応を引き起こす、植物由来のものだ。ファイザー製やモデルナ製など、ヒトの体内でウイルス様の物質をつくるmRNAワクチンとは仕組みが異なる。
田辺三菱によると、北米などでの最終治験の結果、発症を予防する効果が、デルタ株で75・3%、ガンマ株で88・6%。2回接種後の38度以上の発熱は10%未満で、重い副反応はなかった。2~8度の冷蔵で流通が可能というメリットもある。
「まだ最終決定ではないが、申請を受け付けることはないだろう」
3月にあった国際記者会見で、WHOの担当者は、このワクチンについて「緊急使用リスト」への登録申請を認めない見通しを述べた。
WHOが安全性や効果を審査してこのリストに加えることで、途上国で緊急使用されたり、国際的なワクチン分配の枠組みに採用されたりする目安となる。企業にとっては、「お墨付き」が得られ、普及の後押しとなるメリットもある。
担当者は見通しの理由として…

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