「が」と続けないで「。」で言い切る。戦争はいけない。
記者コラム「多事奏論」 高橋純子
――戦争はなぜ起きるの?
「人間が愚かだからだよ」
――どうしたら愚かじゃなくなるの?
「ちゃんと考えることだよ」
そんな絵本を読んだ記憶がおぼろになるのもむべなるかな、この世に生まれてはや半世紀、鼻で笑われた経験は星の数ほどあるのだけれど、なかでも時折思い出してしまうのは外務省幹部によるものだ。
「『唯一の被爆国として』だなんて、世界で言ったら笑われますよ」
だって日本は米国の核の傘に入っているんですから――。なるほど、それが本音か。しかし人にも、国にも、立ち返るべき原点というものがあるはずだ。愚かな戦争に突き進んだ敗戦国であり、被爆国であること。そこから足を放して、どうやって日本外交なるものに背骨を通すのだろう?
そんな問いを携えて当の官僚と食事を共にしたこともあるけれど、憲法9条は殴られている友人を助けられない、恥ずかしいという、いささか素朴な熱弁をふるわれたくらいで、深い話は聞き出せなかった。
一事が万事そんなふうで、外務省担当としてまるっきり使い物にならない私は省内をぶらぶら散歩して時間を潰し、時に、敷地内にある陸奥宗光の銅像と向き合った。
戦争がまだ「合法」だった時…
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