岐阜の夫婦が開いた島の窯元、次代へ 元地域おこし協力隊員が継承

小西孝司
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 島根県・隠岐諸島の西ノ島町にある町内唯一の窯元の経営を、地域おこし協力隊員だった女性2人が引き継いだ。窯は岐阜出身の夫婦が四半世紀前に開き、地元の風土に根ざした工芸品を生み出してきた。30代の2人は、若者らが気軽に集う場にしたいと願う。

 静かに焼き物に取り組める土地を探していた加藤唐山(とうざん)さん(78)と妻洋子(ひろこ)さん(78)は1996年、旅行で訪れた西ノ島町が気に入り、名古屋から移住。翌年、航海安全の守り神としてあがめられる焼火(たくひ)山(焼火神社)のふもとに焼火窯を開いた。同町で唯一の窯元だ。

 夫妻はいずれも岐阜県多治見市美濃焼の窯元の家に生まれた。世界ジオパークの地の利をいかし、土は地元の赤土や黄土を、釉薬(ゆうやく)はヒノキ科のカイヅカイブキや杉の灰、海藻を使う。2010年に県ふるさと伝統工芸品に指定された。洋子さんは「風流(ふりゅう)染め」に取り組む。土や灰で染め、海水で洗って色を定着させる染め物だ。

 加藤さんが後継者を考えるようになったのは60代のころ。何人もの弟子がいたものの、「一代で終わるんではないかと」。町に相談し、後継者候補の地域おこし協力隊員として18年、静岡出身の池田八重子さん(39)と東京出身の伴田(はんだ)さつきさん(32)が採用された。

 2人とも工芸の世界は未経験。池田さんは東京都内で生活雑貨店の副店長をしていたが、「住むためだけに働くような暮らしがむなしくなって」。伴田さんは奈良のカバン製造会社で働いたが、分業ではなくすべての工程に携わる仕事がしたかったという。

 2人は3年の任期が終わっても、アルバイトをしながら窯で修業。今年1月に正式に継承した。町観光定住課によると、地域おこし協力隊員が町の事業所を継いだのは初めて。唐山さんは2人を「まじめで素直。いい子に恵まれた」と評価し、「まだまだ入り口。これからおもしろさやつらさがわかってくる」という。

 2人は27~29日、継承を記念し、生活雑器など100点以上を展示・販売するイベントを町コミュニティ図書館(いかあ屋)で開く。その制作に追われる日々だが、今後、若者向けの体験メニューに力を入れたいと口をそろえる。池田さんは「島は娯楽が少なく、わくわくするコンテンツが少ない。モノづくりを楽しめ、仕事以外の知り合いができるような環境を作りたい」、伴田さんは「若者が来やすい場所にし、おもしろさを伝えたい」。

 加藤さん夫妻の自宅は窯のすぐ隣。洋子さんは「(焼き物は)数年なんてまだまだ。2人にはまず陶芸に力を入れてもらい、私は染め物を続けないとね」。事業を譲っても、引き続き夫妻の指導は続きそうだ。(小西孝司)