先輩の予告ホームランに発奮 プロ注目の大阪桐蔭バッテリーの関係性

山口裕起
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 (高校野球・春季大阪府大会決勝 大阪桐蔭3―2履正社)

 目の前を通過する大飛球に、あぜんとした。

 「ほんまに打ったんで驚きました。すごい先輩やなと。あれで気合が入りました」

 9回2失点で完投した大阪桐蔭の左腕・前田悠伍(2年)が感謝したのは、三回の場面だ。

 制球が乱れて3長短打を浴び、2点を先行された直後。ベンチに戻ると、捕手の松尾汐恩(しおん)(3年)に肩をぽんぽんっとたたかれ、言われた。

 「俺がホームラン打ったるから、しっかり投げろよ」

 1死後、3番打者の松尾が初球のスライダーを振り抜く。快音を残した打球は、そのままフェンスを越え、高校通算25号が左翼の芝生席深くで弾んだ。

 1点差に迫ったこの一発で、前田の投球は変わった。140キロ台中盤の直球が走り出し、持ち味の低めへの制球も安定する。四回以降は散発3安打で無失点。テンポよく流れを呼び込むと、味方打線が五回に追いつき、八回に勝ち越してくれた。

 松尾とは新チームが発足した昨秋からバッテリーを組む。「なんでも話せる大好きな先輩」で、寮でもよく一緒にいるほど仲がいい。

 きっかけは、昨夏。練習中に言われた、ひと言だった。

 「タメ口でええからな」

 それから、2人の会話から徐々に敬語がなくなり、友達のような間柄になっていったという。

 松尾は言う。「間違いなく桐蔭の中心になる選手だから、余計な気を使ってほしくなかった」

 前チームからレギュラーだった松尾自身も、先輩にタメ口を許してもらっていた。

 「『松浦くん(慶斗、現日本ハム)、もっと腕を振って投げてや』とか言っていました」

 もちろん、礼儀やあいさつはおろそかにしない。ただ、同じユニホームを着て試合に出れば、「先輩、後輩は関係なく、野球に集中すればいい」との思いがある。

 チームの空気は受け継がれる。前田も「今では、だいぶ慣れました」。

 松尾が有言実行の本塁打を打ったときも、「ナイスバッチン」とハイタッチで迎えたという。ただ、あまりにもの衝撃に、「さすがです」と敬語も付け加えた。

 この日、前田は優勝した今春の選抜大会決勝、近江(滋賀)戦以来のマウンドだった。

 試合前に緊張していると、「びびってんちゃうんか」と松尾に声をかけられた。

 すぐに、「びびってないわ」と返したが、「あれで緊張がほぐれた。松尾さんには、僕の性格が見抜かれています」。てへへ、と笑う。

 チームは負け知らず。ライバルの履正社に競り勝ち、これで、秋の大阪と近畿、神宮大会、選抜に続き、春の大阪も制し、27連勝だ。

 だが、数字や無敗にこだわりはない。プロも注目する2人は、夏を見据えて口をそろえる。「全国制覇」。めざすは、ただ一つ。日本一のバッテリーになることだ。(山口裕起)