現場へ! 岐路のペット業界②
4月半ばの週末、日本獣医生命科学大学の田中亜紀講師(法獣医学)は、埼玉県北部にある犬の繁殖業者のもとを訪ねていた。約60項目のチェックシートを手に、研究室の学生と犬の状態などを確認していく。
ペットショップが販売用の子犬・子猫を仕入れるオークション(競り市)の一つ「関東ペットパーク」(埼玉県上里町)の委託で始まった、繁殖業者への立ち入り調査だ。
この日立ち入った業者は、昨年6月から段階的に施行が始まった具体的な数値規制を含む「飼養管理基準省令」に対応するため、自宅ごとこの地に転居してきていた。コンクリート敷きのドッグランは3カ所に区切られ、それぞれのスペースで計約50匹の犬たちが思い思いに過ごしている。田中さんたちは、犬の状態を記録に残すため1匹ずつ写真におさめ、犬舎や周辺の臭気と騒音を測定する。
やってきた際には激しくほえていた犬たちも、いまは静かだ。その様子を見て田中さんは「静かになるまで約10分。繁殖用の犬たちがしっかり社会化されている証拠。日頃から人手をかけて世話がなされている」。
ケージに入れっぱなしでろくに世話をしない繁殖業者では、犬たちの社会化が進まず、調査の間ずっとほえ続ける。「声を張り上げないと会話にならないことも多い」のだとか。
犬たちがドッグランに出ている間に掃除された犬舎内は木製の棚が設けられ、ケージ同士が直接積み重ならないよう工夫されている。夏前にはエアコンを2台、新たに設置するという。「自宅の引っ越しも含めて3千万円以上を投資しました」と経営者の女性は説明した。
田中さんは言う。「ケージの…
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