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日医工が経営再建 雇用や業界に影響は、県など注視

竹田和博、伊藤稔、井潟克弘
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 ジェネリック医薬品(後発薬)製造大手の日医工(本社・富山市)が私的整理での経営再建を目指すことになった。国に承認された手順を逸脱して薬を製造し続けていたことが明らかになり、子会社の損失も抱えて、業績を一気に悪化させた。

 同社は13日、私的整理の一つである事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)を申請したと発表した。同社は今後、政府の認証を受けた第三者機関を介して債権者と再建策を協議する。ただ、現時点で、田村友一社長が記者会見などで状況を説明しておらず、経営再建が県内の工場や雇用に及ぼす影響は不透明だ。

 「(日医工には)県内にも取引先がたくさんあるので、県としてしっかり目配りしていきたい」。富山県の新田八朗知事は17日の会見で同社について語った。

 知事は、経営再建で雇用が失われる可能性については否定的な観測を示した。そのうえで、「事業再建の過程でそのような情報をキャッチしたら、より慎重に考えるよう対処する必要がある」と語った。

 また、同社の田村社長の経営責任については「私の立場で申し上げることではない。ご自身で判断すること」と述べた。

 同社は後発薬普及の国策を追い風に、この10年余りで売上高を2千億円近くまで伸ばした。「国内の医薬品の1割は自社製品」と豪語し、後発薬企業の世界トップ10入りを目標に掲げるまでの急成長を見せた。

 だが、2021年3月、富山第一工場で長年、薬剤の出荷試験などの際に法令違反が繰り返されていたことが、県による調査で判明。県から32日間の業務停止命令を受けた。米子会社が開発する医薬品の承認申請が遅れたことも追い打ちとなった。

 今月13日に発表した22年3月期決算では、純損失が1048億円で、過去最大の赤字(前年は41億円の赤字)となり、同日にADRを申請した。

 工場のある富山県滑川市にも動揺が広がっている。

 同工場は、敷地面積6万1千平方メートルを誇る経口剤の生産拠点で、年間最大110億錠を生産できるとされる。地元の雇用を支え、市内には同社が事業費の一部を出資し、命名権を持つ本格的な人工芝のサッカー練習場もある。市商工水産課の担当者は「経過を見守っている。今後、対応すべき点が出てくれば、きちんと対処したい」と話した。

 一方、江戸期の売薬からの歴史を持つ富山県内には約80の製薬会社が集まる。20年の医薬品生産金額は約6609億円で全国4位、人口1人あたりの生産金額は全国1位(19年時点)だった。

 同社の経営再建は、昨年に不祥事が続いて信頼回復の途上にある薬都・富山全体に影を落とす。

 同社の法令違反をきっかけに、富山県薬事審議会では昨年7月、県内企業向けに再発防止策や信頼回復に向けた方策をまとめた。これを受け、県は庁内に公益通報窓口を設けたほか、無通告査察を強化するため人員を増やすなどした矢先だった。(竹田和博、伊藤稔、井潟克弘)