悪質業者による消費者トラブル相次ぐ 県警などが注意呼びかけ
【奈良】県内で悪質な業者による消費者トラブルが後を絶たない。17日には不適切な工事で代金をだまし取ったとして県警が京都市の電気工事業者を逮捕した。訪問業者だけでなくネット通販のトラブルも増える中、県警や県消費生活センターが注意を呼びかけている。
県警は17日、うそをいって工事代金をだまし取ったとして京都市伏見区の電気工事会社経営の男(54)を特定商取引法違反(不実の告知、不備書面交付)と詐欺の疑いで逮捕し、発表した。容疑を否認しているという。
奈良西署によると、男は2021年1月、京都府宇治市の60代女性に「漏電ですね」とうそを言い、工事代金19万5千円を詐取。同年7月には京都市の80代女性に「即払ってくれるならすぐに直す」とうそを言って現金10万円をだまし取った疑いがある。
男は工事契約を結ぶ際、クーリングオフについて記載のない書類を渡していたという。いずれの被害者も自宅の停電をきっかけに男に工事を依頼したが、署が調べたところ適切な工事は行われていなかった。
発覚のきっかけは、県内の単身の高齢女性から県警本部に寄せられた相談だった。突然訪ねてきた男に出張費を請求され、トラブルになったという。署が国民生活センターに照会したところ、男に関する相談が数件寄せられており、今回の被害について捜査。県内でも複数の被害があるとみて引き続き調べている。
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県消費生活センターによると、2020年度、不要なリフォームなど住宅に関連する消費者トラブルの相談は233件。全相談件数は4745件と19年度の4384件を大きく上回った。コロナ下で在宅機会が増えたことや、マスクや消毒液の注文をめぐるトラブルが増えたためとされる。また、相談者の4割が高齢者だ。
トラブルとなる業者は、最初は格安の工事料金を示し、工事が始まると、「思ったより手間がかかる」「交換しないといけない」などと伝えて高額の請求をするという。工事が始まった後では断りにくいという消費者心理をついている。
こうしたトラブルはかぎの紛失やトイレなど水回りの工事、住宅リフォームなどに多くみられる。
同センターは対策として、工事契約を結ぶ前に料金や工事内容をしっかり確認し、想定より高額であれば応急処置にとどめてもらい、修理は他の業者を検討するよう呼びかけている。
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消費者トラブルの実態も様変わりしている。
以前は羽毛布団などの訪問販売が多かったが、コロナ下で減少。最近は通信販売などが主流だ。「初回無料」の商品を購入したところ、定期購入になっていた「定期購入商法」や、フィッシング詐欺などでクレジットカードの情報を盗まれる被害についての相談が多いという。
特に定期購入商法は、消費者庁などによると、18年は2万1900件の相談だったが、20年に5万9500件に急増。いまも高止まりの状況が続いているという。トラブル増加を受け、6月には定期購入商法の厳罰化を盛り込んだ改正特定商取引法が施行される。
定期購入商法は、初回無料と大きく表示する一方、定期購入である旨を小さく表示するなどしている▽解約条件を明示せずに、いつでも解約できると思わせる表示をする、などの手口がある。いずれも消費者の誤解を招く恐れがある表示で、法律違反の可能性がある。違反すれば100万円以下の罰金が科される場合もある。
消費者庁は定期購入商法などへの注意点を同庁ホームページで公開しており、担当者は「注文する前に定期購入かどうか必ず確認して欲しい」と話した。(渡辺元史)
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【消費者トラブルの注意点】
〈リフォームなど不要な工事〉
・突然訪問してきた業者とはその場で契約しない
・契約する場合は複数社から見積もりを取る
・工事内容は納得するまで聞く・工事内容の説明や業者とのやりとりは音声やメモで記録しておく
〈クーリングオフの記載がない書面〉
・書面を確認し、契約解除について記載がなければ違法。業者に書面を作り直してもらうか警察に相談する
〈定期購入商法〉
・お得感を強調した商品は注文する前に定期購入か確認する
・解約方法を確認する
・証拠を残すために注文確定の最終確認画面を画像として残しておく
・成年年齢引き下げで18、19歳は1人で契約できるように。契約内容を慎重に確認する
(国民生活センター、消費者庁への取材に基づき構成)
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奈良簡裁は6月、特定商取引法違反の罪で略式起訴された男に罰金の略式命令を出した。詐欺容疑については、奈良地検は不起訴処分とした。
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