「プロ部活」目先にとらわれる不幸な構造 スポーツ何のため:コメントプラス

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▽なぜスポーツ指導の暴力はなくならない? 秀岳館高の会見を読み解く(15日配信)

https://www.asahi.com/articles/ASQ5G63FWQ5GUTQP01X.html

 この記事には、教育ジャーナリストおおたとしまささん、人類学者の磯野真穂さんがコメントしました。

 おおたさんは、柔道出身の格闘家である青木真也さんに「プロ部活」についてインタビューしたことを自著から抜粋する形で紹介しました。

 「『プロ部活』とは、学校の部活を通してプロやそれに準ずるレベルの選手を育成する構造だ。学校という公的なシステムの中に、競技のエリートを育てるシステムが不健全に寄生していると青木さんは指摘する。『中学の指導者は、中学生の大会で1番になることをやっぱり求めます。その場で成果を出そうとします。そのためにバカバカやらせるばかりで、高校でどうなるかとかは考えないわけですよ。子供は子供で中学でいい成績を残さないと高校に行けないと思うから必死でやります。どんどん目先にとらわれていく不幸な構造です』」

 「殴られて育てられたからいまの自分があるという人も中にはいるが。『それはずるい論理。僕だって殴られて育って、一応いまがあるけれど、そうやって生き残ったのは全体で見れば1%とかの話であって、それを100%正当化するのはずるいです。僕のことを殴ったりどついたりした先生は、言語で伝える能力がなかっただけ。僕はスポーツ指導においても体罰には反対です』。殴られるのが怖くて言われたとおりにやるから、それなりに強くはなる。柔道の道を究めるというよりは、調教である」(『習い事狂騒曲』より)

 磯野さんは、「スポーツの語源を辿(たど)ると、『気晴らし』や『娯楽』(pastime、entertainment)に行き当たります。この語源からは考えられない状況が、なぜ部活動で起こってしまうのか」と問いかけました。「記事にもありますが、スポーツの目的が、心身の鍛錬にあると考えられたことがその1つの原因でしょう。さらに言えば、言葉の意味変化はしばしば起こることなので、スポーツの目的が心身の鍛錬になること自体は悪いとは言えない。ただ問題は、『殴ることが教育である』という短絡的な思想が出来上がり、その思想を覆せない構造が立ち上がったことです」と大もとの原因を探ります。

 その上で、おおたさんのインタビューに対し青木さんが話した「どんどん目先にとらわれていく不幸な構造」について「注目に値する」とし、こう提言しました。「教育とは、子どもの1年や2年先ではなく、もっとその先、たとえば10年、20年先を見越して行われるべきものです。しかし大人たちが『目先』に囚(とら)われ、その目先のために『心身の鍛錬』と称して、暴力が正当化されてしまう。そのような構造からこの問題を捉えると、『暴力の根絶』という可視化できる状態を目標とするのは小手先に思えます。考えられるべきは、部活動のその先に、どのような子どもの未来、社会を指導者が描いているのか。そのための指導とはどのようなものか、ではないでしょうか」とした上で、どれが暴力でどれは違うかという重箱の隅をつつく議論に陥らないためにも「未来から今を見据える議論を行うことが建設的だと感じます」

「学内でルッキズム問い直す機会に」

▽大学パンフに「美女・美男図鑑」 学内から批判、識者はどう考える?(15日配信)

https://www.asahi.com/articles/ASQ5F3R8FQ4VPTIL00K.html

 この記事には、元競泳五輪代表で国連職員の井本直歩子さんがコメントしました。「私大志願者数9年連続ナンバーワンの近大の広報室がこんな時代錯誤で大衆的な感覚を持っていたのかと驚いた記事でしたが、なるほど、冊子全体を見てみると、ファッション誌さながらのポップでオシャレなつくりで、さすが近大、と唸(うな)りました。通常の大学案内の概念は完全に壊され、雑誌を読んでいる気分になるため、美女・美男図鑑も違和感なく収まっている感はあります」としつつ、「業者の策略に流されてしまったのだろうと思いますが、それでもやはり(社会学者の)上野(千鶴子)さんの言われるように、チェック機能が働いていなかったのだとしたら問題です」と疑問視しました。「視聴率、購買率を上げるためであれば、メディアも営利目的なんだから、と大衆的で社会の倫理に反するようなコンテンツも許容されている。どういった社会を目指さなければならないのかの社会的責任は、後回しにされてしまっている。企業のミッション設定の問題でもあると思います」とも指摘。「しかし大学、しかも私学志願者ナンバーワンの人気大学となれば、議論の余地すらないと思います。ルッキズムがなぜいけないのかについて、今一度学内で問いただす機会にしていただけたらと、附属中高の卒業生としても、後輩たちのために切に願います」と訴えました。

プチ鹿島さん、沖縄扱う1面見出しに注目

▽「平和の島、今なお…」沖縄知事が国民へ訴え 復帰50周年記念式典(15日配信)

https://www.asahi.com/articles/ASQ5H6KK2Q5DTIPE025.html

 この記事には、時事芸人のプチ鹿島さんがコメント。「沖縄の日本復帰50年の翌日、各紙の一面トップを並べてみましょう」と、式典翌日の5月16日付の朝刊各紙の見出しをその日の午前中に紹介しました。

 朝日「50年『平和の島』達成されず 続く過重な基地負担 沖縄知事、式典で訴え」

 読売「沖縄復帰50年 首相『強い経済実現』基地負担減へ決意」

 毎日「沖縄の平和 目標遠く 知事『負担軽減を』」

 産経「国と沖縄 歩み寄る未来へ 復帰50年 陛下『努力に敬意』」

 東京「『平和の島 達成されず』 東京と同時式典で知事 米軍施設なお7割集中」

 プチ鹿島さんは続けて「いかがでしょうか。『誰』の言葉を持ってきているか。これだけで新聞読み比べの醍醐(だいご)味です。各紙のキャラらしきもの、視点も堪能できます」と各紙のニュースの扱いを端的に比較してみせました。「ちなみに日経の一面トップは『世界最大級のサイバー攻撃集団 〈身代金〉で100億円奪取』という企画モノでした。こちらもらしさがあります」と締めくくっています。

※コメントプラスは、ダイバーシティー、SDGs、働き方、教育・子育て、国際のジャンルに詳しい専門家と朝日新聞記者で昨年6月にスタートしました。その後、政治、スポーツ、デジタルの分野に拡大し、コメンテーターは約100人に。有料会員登録していただくとすべてのコメントを読むことができるようになります。登録はこちら(https://digital.asahi.com/info/standard_course/別ウインドウで開きます