甲子園で終わらせない 「妹」の未来のため、消防士は24歳で大学へ
志望動機は「女子野球を広めたかったから」。
この春、24歳で特別入試に合格し、明治大に進学した男性がいる。
藤崎匠生(しょう)さん。小学5年で野球を始め、無心で白球を追いかける球児だった。
地元、高知市の高知中央高で中堅手としてプレー。3年春には、同校初の県大会優勝を経験した。
最後の夏は準々決勝で敗れ、甲子園には届かなかった。だが、自身のプレーに未練は残っていない。
そんな彼が今、「女子野球に恩返しがしたい」と語るのは、苦境を救ってくれた出会いがあったからだ。
将来の夢は、野球を始める前から決まっていた。
救命救急に携わること。小学2年のとき、父をバイクの事故で亡くした。人の命を救う仕事がしたいと思ったからだ。
高校卒業後、1年間公務員の予備校に通った。次の春、晴れて消防士になった。
だが、現実は甘くなかった。厳しい上下関係についていけず、逃げ出したくなった。
「消防士をやめたい」
入庁から3年目の2019年春。お世話になった高校の野球部の部長に悩みを打ち明けた。
すると、提案された。
「女子の硬式野球部の練習を手伝ってみないか?」
ちょうどこの年、高知中央高にできたばかりの部活だった。
予想外の言葉。
心の中で、「大したレベルじゃないだろう」とたかをくくっていた。
だが、内野へのノックでバッ…