いつまでマスクを着けるべきなのか――。海外では日常でマスクを外す国が増えるなか、国内でも「マスク論争」が活発です。政府の対策分科会の委員で、大阪大特任教授の大竹文雄さん(行動経済学)は「飲食店の中でマスクを外し、屋外では人の目を気にして着用するのは、感染対策にもとづく行動ではない」と指摘します。詳しく聞きました。
「社会規範」の先にある「同調圧力」
――周りの目が気になって、外でもなかなかマスクを外しにくい雰囲気があります。
マスクは、屋外で周りに人がいないのに着けても意味はありません。
それでも着ける人が多いのは、「社会規範」となった行動を続けてしまう典型です。
例えば、飲食店でテーブルに置くアクリル板、コンビニのレジで店員と客を隔てる透明シートもそうです。むしろ、換気を悪くする可能性が指摘されています。
おおたけ・ふみお
おおたけ・ふみお 1961年生まれ。専門は行動経済学。著書に「日本の不平等」「あなたを変える行動経済学」など。新型コロナ対策分科会委員。第6波のまん延防止等重点措置を「即停止すべきだ」と主張した。
――日本人がマスクをするのは「同調圧力」とも言われます。行動経済学で説明できますか。
私たちが意思決定するとき、必ずしも絶対的な判断基準をもとにしているわけではなく、なんらかの「参照点」と比較して判断しています。
参照点として選ばれやすいのが、周囲の人の行動や状況です。
参照点よりも上であればうれしい、それよりも下であればつらい、という感覚があります。
周囲の人がマスクを着けていると、それが参照点になり、さらに社会規範となり、その強いものが同調圧力です。
――「表情を隠せる」などの理由で、コロナが収束してもマスクを着けたいという意見も耳にします。
これが社会規範になるのは危険だと思います。
互いに表情が読み取れず、社会の匿名化が進んでしまいます。それが本当に社会がめざすべき姿でしょうか。
「弊害の方が大きい」判断する人が増えた
――なぜ今になって、「マスク論争」が起きたと思いますか。
ワクチン接種が進み、オミクロン株の重症化しにくい特性が広く知られるようになってきたこと、海外ではマスクの規制緩和をしている国が多くなってきたことが理由だと思います。
また、マスクによる感染防止効果と、健康やコミュニケーション、教育への悪影響とを比較して、「弊害の方が大きい」と判断する人が増えてきたのではないでしょうか。
――マスク論争に決着をつけるには、どうすればいいでしょうか。
マスクを着けるメリットとデ…

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