「日本中を揺るがす事件に」 阿武町誤入金、容疑者逮捕で真相解明は

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 山口県阿武町が新型コロナウイルスに関する給付金4630万円を誤入金した問題は18日夜、お金を返さずネットカジノで使ったとして住民の田口翔容疑者(24)が電子計算機使用詐欺容疑で逮捕される刑事事件に発展した。全国的な注目を集める中、町内外の関係者は「真相解明につながってほしい」と期待した。

 逮捕から一夜明けた19日午前、阿武町の花田憲彦町長は多くの報道陣を前に「いつかそういう時期が来るだろうと思っていた」と逮捕を受け止めつつ、急な展開に「驚いたというのが率直な気持ちだ」と語った。

 町によると、町は4月8日、誤入金した直後に田口容疑者に経緯を伝え、同容疑者はいったん返還の意思を示していた。だが、町職員と手続きのため銀行に行くと「今日はしない」と拒否。その日のうちにカード決済でお金の引き出しが始まり、2週間弱で誤入金分が口座からなくなったという。

 田口容疑者の代理人弁護士によると、「海外のネットカジノで全額を使った」と説明。口座からはほぼ連日、100万円を超える出金があり、多い日で1日900万円に上ったという。

 花田町長は「今回の逮捕は真実を知るのに近づいたのではないか」と真相解明に期待し、「お金を取り戻す一つの足がかりができたんじゃないか」と話した。町は田口容疑者に全額の返還などを求めて山口地裁萩支部に提訴している。

 一方、花田町長は「町の誤振り込みが事件の発端だったのは間違いのない事実。(田口容疑者に)申し訳ないことをしたという気持ちは当然持っている」とも語った。

 田口容疑者が「もう元には戻せない」と返還を拒んでいることを町が発表した4月22日以降、役場では苦情や意見の電話が鳴りやまず、メールやファクスが次々に届くという。「ミスを検証し、チェック体制を整えるべきだ」「職員が分担してお金を返すべきだ」といった声だ。また、逮捕前に実名や住所を掲載したホームページはアクセスが集中し、閲覧できない状態が今も続く。

 日本海沿いの人口約3千の小さな町に突然降ってわいた出来事に対し、町民の口は重い。

 町中心部近くに住む元漁師の男性(77)は「最初は町も(田口容疑者が)すぐ返してくれると思っていたのだろう。こんな日本中を揺るがす事件になるとは」と驚きを隠さない。

 町が全面返還を求めている4630万円については「返すのは当たり前のことだが、取り返せないんじゃないか」と悲観的だ。商業施設に勤務する女性(48)は「無理だと思うが、お金を返してほしい」と話した。

 ネットカジノにつぎ込んだとされる公金は、本当にもう残っていないのか。疑問は晴れていない。田口容疑者の代理人弁護士は19日の取材に「刑事手続きを通して、真相解明に近づくことを期待している」と語った。