恐怖にとらわれるプーチン氏 冷静に向き合うために必要なことは

有料記事ウクライナ情勢

聞き手 編集委員・塩倉裕
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 原発を占拠し、市民を虐殺し、核兵器で世界を脅す。ロシア軍によるウクライナ侵攻は、見る者に次々と恐怖を突きつけてくる。人々の恐怖という心理を利用しようとしているかのようにさえ見える戦争。どうすれば冷静に向き合えるのか。(聞き手 編集委員・塩倉裕)

戦争を世界劇場化したロシア 国際政治学者・宮坂直史さん

 ――テロリズムの語源は恐怖ですね。恐怖を利用して自らの目的を達する行為とされます。テロを研究してきた立場から、この戦争をどうみていますか。

 「いま恐怖について考えることは重要です。戦争にせよテロにせよ、恐怖というものが人を最も動かすからです。戦争をする者もテロをする者も、相手をどうやって自分の思い通りに動かすかを考えます。どう恐怖を与えるかがカギになるのです」

 「侵略するロシア軍から見れば、ウクライナの人々が恐怖感を持ってくれなければ相手を降伏させられません。だから恐怖を与え続けているのです」

 ――ロシア軍が緒戦でチェルノブイリ原発を占拠した際には「国家によるテロなのでは」と驚く声も聞かれました。

 「軍が原発を占拠したり住民を虐殺したりする行動が『国家によるテロ』に見えるのは不思議なことではありません。テロには多様な定義があり、定義の仕方によっては国家もテロを行う主体に含まれるからです」

 「テロとは、政治的な目的を持って行われる違法な暴力の行使、または脅しです。多くの場合は弱者が実行主体になり、自らの抱く政治的大義を広めるために宣伝をしますが、国家がテロをする場合は逆に隠します。露見すれば国の威信が低下し、信用が地に落ちるからです」

 ――今回のロシア軍は隠そうとしているでしょうか。

 「プーチン大統領が戦争を世界劇場化し、本来なら見せるべきではない違法行為を満天下にさらしていることに、テロ研究者として驚いています。国連安全保障理事会常任理事国である大国がここまで自らの威信を傷つけるのは、どう考えても得策ではないからです。従来のテロ理解からは説明できない事態が起きていると思います」

 ――なぜ、もっと合理的に行動できなかったのでしょう。

残虐な戦争の恐怖にどう向き合えばよいのか。宮坂さんはテロ研究の知見をもとに、国際社会に求められることを論じます。記事後半では、SNSで戦場の様子が瞬時に拡散される時代の戦争について、ジャーナリストの津田大介さんに聞きます。

 「プーチン氏自身が恐怖にと…

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