目の前には白く輝く海氷、その先には南極大陸。なだらかな斜面の先何千キロかなたまで続くのは氷だけの世界だ。「こんな壮大な眺望を拝めるなんて」。越冬生活いろいろあれど、扉を開ければ灰色の気持ちは真っ白にリセットされる。
2020年9月3日、昭和基地がある東オングル島から8キロ弱、南極大陸沿岸の「向岩(むかいいわ)」へ向かった。近場なのに、南極3回目にして初めて訪れる場所だ。
大陸までの最短は直線距離で4キロほど。向岩は10次隊まで大陸の上がり口にしていたが、先にクレバスがあって危険もあり、使われなくなったという。今は、海氷上を北東に約15キロ走った大陸沿岸の「とっつき岬」を上陸地にしている。
4人で雪上車2台に乗り込む…
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【視点】わたしは寺田寅彦と中谷宇吉郎の、物理学者としての着想の鋭さと同時に不思議な詩情を放っている随筆が学生のころ好きなのですが、この記事を読んで中谷宇吉郎「白い月の世界」(岩波文庫「中谷宇吉郎紀行集 アラスカの氷河」所収)の話を思い出しました。雪