物価は上がっても賃上げ広がらず ジレンマの日銀、金融緩和継続へ

徳島慎也
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 日本銀行は「物価上昇率2%」を目指し、世の中に大量のお金を流す金融緩和を続けてきた。2013年1月に目標を掲げて以降、消費増税の影響なしに2%が「達成」されるのは初めてだが、足元の状況は日銀が思い描いていた姿とはほど遠い。

 日銀が目指したのは、日本の経済が物価が下がるデフレから抜け出し、企業の収益とともに働く人の賃金が上がることで、モノやサービスを買う需要が高まり、物価も上がっていく安定した好循環だ。

 しかし、今起きているのは需要の高まりに引っ張られた物価上昇ではない。ウクライナ危機や円安が相まって石油や天然ガス、穀物の価格が高騰している「コストプッシュ型」の物価上昇だ。

 4月の消費者物価指数でも、電気代などの光熱・水道が前年同月より15・7%、生鮮食品を除く食料が2・6%上昇したのに対し、エネルギーや食品以外の生活に身近な分野の上昇率は家賃が0・0%、衣服や履物は0・8%だった。

 コロナ禍で落ち込んだ需要が急速に回復し、賃金とともに幅広い商品やサービスの価格が大きく上がっている米国とは様子が違っている。日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁も今の物価上昇は「持続力を欠く」とみている。

 日本の国内総生産(GDP)は今月発表された22年1~3月期でも、コロナ禍前の水準にまだ戻っていない。エネルギー価格主導の物価上昇は企業の収益を圧迫し、賃上げの動きは大きく広がっていない。こうした状況をふまえ、日銀は物価上昇を抑える金融引き締めではなく、むしろ「強力な金融緩和により、経済をしっかりとサポートすることが重要だ」(黒田氏)との立場で、金利抑制策を続ける方針を示している。

 しかし、日銀が金利の抑制を続ければ続けるほど、利上げを進める米国との金利差は広がる。円を売って金利の高いドルを買う動きが円安を推し進め、輸入品の価格上昇に拍車をかける構造だ。日銀の金融緩和は、今後も物価高の一因となり続ける可能性がある。(徳島慎也)