元銭湯を気軽に集える「居場所」に再生 防府のグループ

武井宏之
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 かつて人々の交流の場だった元銭湯を改修し、子どもも大人も気軽に集える「居場所」に再生しよう――。山口県防府市で市民グループがこんなプロジェクトに乗り出した。メンバーらが自ら室内のリノベーションを手がけ、秋以降に映画の自主上映会や講演会の開催を目指している。

 居場所「まんまぁる」をつくるのは、防府市を中心とした市民グループ「まんま会」。市中心部にあり、1991年に廃業した銭湯「戎湯(えびすゆ)」(戎町2丁目)の古い建物を改修する。6月末からの本格的な工事に先立ち、4月初めにごみ捨てなどの作業を開始。今月8日には居場所づくりの先行事例を学び、どんな改修をするか話し合うイベントを開催した。

 まんま会は、貞平理恵代表(51)が11年前、特別支援学校の先生と障害がある子どもの交流を描いた映画「1/4の奇跡~本当のことだから~」の自主上映会をしたいと考え、仲間に呼びかけて立ち上げた。市内の寺で月1回、子連れの女性らが日々の悩みを話し合う座談会を開くなどの活動を続けている。

 貞平さんの本職は、小学校の先生。「子どもも保護者も、相談したくても、なかなか心を許せる人間関係がない」と感じてきた。多様な人々が気軽に集える癒やしの居場所が必要だと考え、夫(54)の実家がかつて営み、建物が残っている元銭湯のリノベーションを思い立った。

 夫が小学生の頃、今はない八百屋や魚屋など様々な店が立ち並ぶ一角に戎湯はあったといい、人々の交流の場でもあった。県によると、県内で営業する銭湯は79年度に181施設あったが、今年4月現在には16施設まで減った。防府市内では2020年に最後の1施設が廃業し、銭湯は姿を消している。

 居場所づくりをしたいという貞平さんの構想に、夫の父(84)は「街に活気が出る。大通り沿いにカーテンを閉め切った建物があるのは良くない」と賛同してくれた。

 6月末には室内の壁を壊し、2部屋を一つにする工事を本格化する。地元の大工に教わりながらイベント形式で参加者らが改修し、壁にしっくいを塗ったり手形を付けたりするという。

 廃業から約30年経つ元戎湯だが、男湯と女湯にまたがる番台やロッカー、体重計などが当時の面影をとどめる。貞平さんは「銭湯だったことがわかる形でリノベーションし、子どもや大人が集う『現代版銭湯』のような、心を軽くする居場所をよみがえらせたい」と話す。武井宏之