「片翼の飛行機」パラ開会式の少女、MV出演へ 「やってみないと」

石平道典
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 昨夏の東京パラリンピック開会式の出演者たちが、ちょうど1年後となる今年8月24日に、1本のミュージックビデオ(MV)の公開を計画している。ダブル主演の一人は、開会式で主人公を演じた車いすの和合(わごう)由依さん(14)。開会式の仲間たちとともに、MVに込める思いは何か。

 開会式で和合さんは「片翼の小さな飛行機」を演じた。空を飛ぶことを諦めていたが、自由に飛び回る様々な飛行機を見て自らも飛ぼうと決意するストーリーだった。

 「開会式で学んだのがチャレンジすることの大切さです。主人公の飛行機も最初は飛べないと思っていたけど、周りの力を借りたら飛べた。やってみないと分からないんですよね」

 いま、東京都内の中学3年生。生まれつき下半身と左手に障害があり、普段は電動車いすで生活する。東京大会でいろんな障害を抱える人たちと接し、みんなで助け合えば前に進んでいけると思うようになった。

 共演した一人が、「EYE(アイ) VDJ(ビデオ・ディスク・ジョッキー) MASA」こと、武藤将胤(まさたね)さん(35)だ。主人公の前に突如現れた、電飾のデコトラの先頭に陣取っていた。人工呼吸器をつけたまま視線を動かし、空を飛ぶ勇気を伝える光の集団のリーダーを演じた。

 「表現者として日に日に成長していく由依ちゃんを見て、僕も刺激をもらいました」

 武藤さんは、全身の筋肉が徐々に弱まる難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)と闘いながら、目の動きで音楽や映像の制作活動を続ける。視線入力と音声合成ツールを駆使し、取材にこう語った。

 「誰もがおのおのの個性を引き立て合い、支え合いながら垣根を越えて一つのエンターテインメントを作り、輝いている。とても美しい光景でした」

 開会式の時のような、ボーダーレスな社会を――。そんな思いを抱く武藤さんが、共演者らに声を掛け、和合さんも「共生社会をもっといろんな場所で実現したい」と応じた。東京大会での希望の光を未来につなごうという「FLY PROJECT」が動き出した。4月には、武藤さんが作詞した楽曲「FLY」をリリースした。

 《もっと高く もっと先へ 自由に舞い上がってみてよ

 仲間を信じ 未来を信じ 自分の歩みを信じて》

 「開会式の経験を胸に、多様な仲間たちが自由に羽ばたいてほしいという願いを込めて書いた曲です」と武藤さんは言う。

 武藤さんは、空を背景に「FLY」の文字を入れたジャケットを視線入力でデザイン。親交のあるロックバンド、andropの内澤崇仁さんが作曲し、疾走感あふれる曲になった。

 8月に予定するFLYのMVは和合さん、武藤さんのダブル主演で、楽曲に込めたメッセージを表現するという。開会式のディレクターだったウォーリー木下さんが演出を務める。

 和合さんは「開会式のメンバーがまた集まり、続いていることがうれしい。助け合いの大切さを伝えられたら」。武藤さんは「開会式を見ていただいた時のように、多様性が未来の希望になっていくワクワク感を、一緒に感じてもらえる作品にしたい」と願う。

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 プロジェクトでは、MVの資金をクラウドファンディング(CF)で募っている。目標額は300万円で、25日まで。制作費を除く支援金は、ALSの啓発や支援に取り組む一般社団法人「WITH ALS」(代表・武藤さん)などに寄付される。詳細はCFサイト「we fan」(https://wefan.jp/crowdfunding/projects/flyproject別ウインドウで開きます)で。(石平道典)