五重塔「心柱」揺れ緩和、地震・強風時引き戻す効果 香川で観測報告

紙谷あかり
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 五重塔が揺れた時、中心の柱はほとんど動かず、塔を引き戻す――。古くから各地に残る五重塔は、これまで地震で倒壊したという具体的な記録が残っていない。香川県内の二つの五重塔で実施されている観測調査で、強固さの要因の一つと考えられてきた塔の中心にある「心柱(しんばしら)」の役割が、明らかになった。

 調査は、四国霊場70番札所・本山寺(三豊市)と75番札所・善通寺善通寺市)の五重塔で昨秋から行われ、揺れと風を常時モニタリングしている。約半年が経った5月1日、これまでの観測結果の報告会が両市内で開かれた。

 東京大学地震研究所の楠浩一教授(耐震工学)は、地震と強風の時の観測結果を報告。昨年11月の強風時(最上部の五重目で震度2相当)で善通寺の塔が揺れたときに心柱はあまり動かず、引き戻す効果があるとした。

 さらに、今年1月の地震時(地表で震度2~3)では、心柱は少し動いたが、塔と同じようには動かなかったため、揺れを緩和したと考えられた。本山寺の塔も、揺れたときに心柱はあまり動かなかった。

 100年以上前に建てられた現在の両塔の心柱は、地面に接しておらず、上からつるされた「懸垂式」になっている。

 楠教授は「より大きな揺れがあるときに、どういう動きになるのか引き続き観測したい。(五重塔が)立ち続けている理由を学術的に明らかにできれば」と話した。

 東大大学院の藤田香織教授(木質構造学)は心柱が地面につかず、つり下がっている役割について解説。木でできた塔が、重さによって縮むときにできる隙間を小さくし、雨漏りを防ぐのが主な目的だという見方を示した。「その後、振り子の役割が期待されたのかもしれない」

 今回の調査は、建築家や寺関係者でつくる「本山寺整備委員会」と、東京大学によるもの。五重塔の揺れの特性や二つの塔の共通点・違いなどを調べることで、保存修理に役立てることを目的としている。

 整備委委員長で建築家の多田善昭さんは「(調査を)次の世代の人たちが、さらに良い建築を造っていく土台にしたい」と期待を込めた。(紙谷あかり)