『噓つきアーニャ』の米原万里 ロシアを知る彼女が存命なら今何を…

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編集委員・後藤洋平
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 米原万里(1950~2006)による『噓(うそ)つきアーニャの真っ赤な真実』は、冷戦下の60年代、チェコ・プラハでともに過ごした3人の親友を30年後に訪ねる3編の交遊録からなる。激動の時代を乗り越え、再会を果たした彼女たちは抱擁のあとで何を語ったのか。ロシアのウクライナ侵攻で世界が揺れる今こそ、読み直したい。

 学校でレーニンに関する映画がしばしば上映されたこと、購入する靴の選択肢が計画経済のため極端に少なかったこと……。米原がソビエトを中心とする社会主義を肌で感じて育ったことが伝わってくる。10代をチェコで過ごしたのは、日本共産党の幹部だった父が現地の国際交流機関に勤務していたからだった。

赤毛のアン』のような「永遠の名作」

 劣等生だったギリシャ人のリッツァは猛勉強の末に医師に。ユーゴスラビア人で秀才のヤースナはベオグラードで家庭を築くも苦悩に直面していた。誰よりも祖国ルーマニアを愛していたチャウシェスク政権幹部の娘、アーニャは英ロンドンにいた。

 寄せる波のようにつづられる再会の場面は感動的だ。随所に織り交ぜられたユーモア、そしてドキリとさせるやりとりが米原の持ち味。刊行当時、文芸春秋で米原を担当していた編集者、藤田淑子さん(62)は「米原さんが長編を書けることを証明した作品であり、『若草物語』や『赤毛のアン』のように女性に勇気を与える永遠の名作」と評する。

 アーニャの両親はチャウシェ…

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