2002年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した「噓(うそ)つきアーニャの真っ赤な真実」(KADOKAWA)などで知られる作家・米原万里。がんのために56歳で他界してから、25日で16年が経つ。米原を「作家としての私の生みの親の一人」という佐藤優さん(62)に、プーチンやゴルバチョフ、エリツィンらについて議論したこと、作家としての米原の才能について聞いた。
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「作家・佐藤優」の生みの親の一人
米原さんは私の恩人です。彼女は作家になる以前、民間のロシア語の会議通訳をされていたので外務省勤務時代から知っていました。しかし、外務省の職員だった私は政府を代表する立場であり、外務省は彼女をトラブルメーカーと捉えていた部分もありました。
というのは、エリツィン元大統領の補佐官だったスハーノフの手記を1990年代前半に彼女が訳したことがあるのですが、両国の関係における重要な部分で原文とは違い、米原さんが書き加えた部分があったのです。
これに対して当時の大使は「外交関係に悪影響が出る。経緯を調べろ」と指示を出し、原文にはない記述が翻訳版に記載されていることが分かった。しかし、彼女とスハーノフにも交友関係があったので、口頭で取材をしたり、新たなメモももらったりしたうえで書いたと私は考えています。そんな経緯から、彼女のことは当時から注目していました。
2002年5月14日に私が…

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