第2回着の身着のまま命がけの脱出 「許せない」 夫婦はロシア語をやめた

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森岡みづほ
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 駅ではほこりをかぶっていない近未来的な電車が何本も行き交う。電車に乗り込むと、いすには傷や落書きが全くない。電車の中では人々は静かに座っている。話し声が聞こえても言葉は静かで音が柔らかく、叫んでいる人がいない。

 駅のトイレは清潔で、個室のトイレは、ボタンを押せばドアまで自動で開くという。ウクライナの駅のトイレはこうはいかない。「まるで別の惑星に来たみたいだ」。セルゲイ・ホルジェブスキー(62)は思わず、トイレの自動ドアを何度も押した。

 セルゲイは長女のマリーナ・アマウリ(39)が暮らす横浜市に、妻のイリーナ(61)とともに3月29日から滞在している。ロシア軍がウクライナに侵攻し、地元の中南部ザポリージャから逃れてきた。

 日本の暮らしは気に入っている。街は清潔で、食べ物もおいしく、人も優しい。治安もよくて心から安全だと感じる。

【連載】日本に逃れて 抱える思い

ロシアのウクライナ侵攻から3カ月。終わりの見えない戦争によって日本でも約1千人のウクライナ人が避難生活を送っています。世界には、ほかにも戦禍や政変によって祖国から他国へ逃れた人たちがいます。日本で暮らす人々のいまを追いました。

 セルゲイは1959年、ザポリージャで生まれ、ずっとその地で暮らしてきた。長らく鉄鋼の溶解炉の作業員として働き、趣味はカメラとバドミントン。友人の結婚式の写真を撮り、地元のバドミントン大会で優勝したこともある。

 次女のタチアナ(31)は同じくザポリージャで暮らすが、マリーナは20歳のころから日本に渡り、ダンサーとして活躍していた。日本は遠く、3年前、孫のジャスミンが生まれた時も、イリーナだけが孫の様子を見に行った。

 いつか日本には行きたいと思っていたが、こんな形とは思わなかった。

 ロシアが侵攻を開始した2月…

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