特産シキミで線香開発 収入で棚田保全に 愛媛・東温の住民

亀岡龍太
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 愛媛県東温市井内地区の住民団体が、地元特産のシキミを活用し、線香を開発した。地元に今も広がる棚田の保全をシキミの収入が支えていることから、住民たちは「シキミの生産を安定させ、棚田を引き継ぐことにもつなげたい」と地域の将来を見据える。

 シキミの枝葉は、主に仏式の法要や墓参などのお供えに使われる。強い香りのために動物が寄りつかない効果があるとされ、仏教では先祖を守る意味合いも込められているという。

 線香は住民でつくる「井内区人・空・棚田を生かす会」が愛媛大学や市などと連携し、6年がかりで開発した。シキミの葉を乾燥させて粉末状にし、形成加工したという。線香の材料はビャクダンやニッケイが多いが、シキミを使う例もあり、懐かしさを呼び起こすような芳香がする。開発過程で特に注意したのは、シキミに含まれるアニサチンという有毒成分。研究機関の分析を元に、お供え用や線香の安全性を確認した。

 井内のシキミは江戸時代から生産され、現在は畑が棚田の周辺に広がる。地区の七十数世帯の大半が栽培していて、お盆や彼岸の前に収穫し、その現金収入をもとに棚田を維持してきた。会によると、井内地区の棚田は約500枚で計約30ヘクタールあるが、シキミの栽培面積はさらに広いという。

 大きな枝ごとに切って収穫してから、お供え用のサイズまで切り落とすため、半分以上は未利用のまま廃棄してきた。これを線香の原料に活用し、SDGs(持続可能な開発目標)にもつなげる。

 今月14日に地元であったお披露目式では、菅野正義会長(63)が「少子高齢化でシキミの手入れもかつてほど勢いがないが、中山間でがんばろうと産学官連携で開発できた」と喜んだ。

 「思季美」という商品名で今夏の発売を目指している。価格は未定。問い合わせは同会(090・9772・1870)。(亀岡龍太)