お坊さんはデニム職人 「裏返して着たい」ほどの1枚に込める思い

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小島弘之
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 能登半島の先端に近い石川県能登町の小さな寺の境内に、一風変わった工房がある。お坊さんがデニムを縫製する、その名も「ボーズソーイング」。元縫製工の前野真慶さん(38)が、真言宗・遍照寺の副住職を務める傍ら、2020年夏に立ち上げた。

 特徴は「100年以上前に使われていた『本縫い折り伏せ』」という製法だ。ミシン1台で、ボタンホール以外を1本の針で縫っていく地道な作業。効率化が重視される大量生産、大量消費の時代にあらがい、時間をかけて仕上げていく。

 通常のデニムとの違いは、外面よりも裏面に出る。前野さんは「お坊さんは人の内面と向き合うものなので、そこが共通しています」。裏の縫い目は細かくて美しく、デニムを購入した人からは「裏返して着たいくらいです」といった感想が届いたこともある。

 縫製との出会いは、大学卒業後のフリーター時代、ふと四国遍路を思い立ち、1カ月半ほどかけて歩いた。すると体重は15キロ以上激減。持っていた衣服が着られなくなった。だが、買いかえるお金もない。そこで、ミシンを使ってブカブカになったジーンズを直してみたところ、縫製の楽しさに引き込まれていった。

 24歳で岐阜市にある縫製工場に就職し、メンズカジュアルなら一通りは縫えるまでの技術を身につけた。「いつかは、自分の工場を持ちたい」。働き始めて6年が経ち、そんな夢を抱くようになったころ、住職の父から突然連絡が入った。

 「寺を継いでほしい」

僧侶とデニム職人、共通するのは

 兄が継ぐと思っていたため…

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