「新・金魚のまち」へ決意 県郡山金魚漁協組合長の嶋田輝也さん

室矢英樹
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 コロナ禍で中止が続いた金魚すくいの全国大会がこの夏、奈良県大和郡山市で3年ぶりに開かれる。「新たな『金魚のまち』に変える1年にしたい」と県郡山金魚漁業協同組合長の嶋田輝也さん(58)。そのカギは、意外なことに「脱・金魚すくい」だという。

 全国有数の生産・販売を誇る大和郡山市には、金魚を養殖する池がそこかしこにある。ひときわ目立つのが金魚のイラストを壁に描いた「やまと錦魚園」の本社だ。昭和元年(1926年)に創業し、嶋田さんは3代目社長を務める。

 プロ野球阪神タイガースが優勝した85年、大学4年生で百貨店の最終面接を受けた日。事業を拡大し、中興の祖だった父正治さんが不慮の事故で命を落とした。急きょ、後を継ぐことになった。

 業績はバブルを経て、90年代になると下降線をたどる。理由は不景気よりも、社会の変化が大きかったという。

 主流の金魚すくいは、高度成長期の60年代がピークだった。地方から流入した団塊世代が都市部の郊外に居を構えた。「げた箱に水槽、居間に鳥かご。少しだけ、暮らしに余裕ができたという象徴だったんよ」

 最盛期の夏場になると、1日に全国200カ所に出荷し、多いときには10万匹を送った。「以前なら幼稚園1カ所で千匹の注文があった」。しかし、園児の数が減るなどして、1カ所に送る金魚も百匹に減った。

 集合住宅の団地で開く夏祭りも減った。自治会の担い手が高齢になり、盆踊りを開く地域も少なくなった。「金魚すくいを見れば、世の中の変化がよう分かるんよ」

 年に数回開くイベントは、60代以上の参加が目立つ。「子どもの頃の思い出や、所帯を持ったときの風景がどこかに影響しているんだろうね」

 この2年間は夏祭りやイベントが急減し、販売が年間400万匹から300万匹に減った。生産量を調整し、以前の200万匹から100万匹に半減させた。

 落ち込みを救ったのが海外輸出だった。経済が伸長する韓国や中国などへ高級金魚を送り、インターネットでイスラエル南アフリカからも注文が舞い込んだ。巣ごもり需要でホームセンターへの出荷もぐっと伸びている。

 コロナ禍で廃業した同業者がいる。「単価の安い金魚すくいにばかり頼っていては食っていけない」。海外の富裕層、巣ごもりの愛好家らにターゲットを転換させることが欠かせない、とみる。

 「金魚はすくって終わりではなく、ブランド化を図って長く愛されるペットにせんとあかんね」。アフターコロナへの決意を誓うように語った。(室矢英樹)