交流戦、「投手界の最強打者」は誰だ 昨年、野手でベンチ入りも
5月、京セラドーム大阪での試合前練習。青いバッティング手袋をつけ、左打席から快音を飛ばす“打者”がいた。オリックス・バファローズの左腕、山崎福也だ。
交流戦を見据えてのアクションだった。
久しぶりの打撃練習に最初こそタイミングが合わなかったが、4球目に右翼に柵越え。その後もスタンドインを連発した。周囲からは「すげえ」「スーパーバッターじゃん」「二刀流?!」との声が漏れた。
球団の公式YouTubeで配信された動画では、スタッフの質問に「最高っす」「(自信は)あります!」と満面の笑みで答えた。
プロ野球セ・パ交流戦が24日に開幕する。まずはセ・リーグの本拠での試合からスタート。「打席に立つ投手」が、どこかで勝敗に絡んでくるはずだ。
リーグ戦で打席に立つことはないが、山崎福は「投手界の最強打者」の一人といえるだろう。
昨年6月3日の阪神タイガース戦(甲子園)は9番投手で先発出場。五回の第2打席では、アルカンタラの速球を捉え、中堅へ二塁打を放った。
「打撃自体好き」と山崎福。中嶋聡監督は「彼の打撃はやばい。たいしたものですね。お手本ですよ」と絶賛した。
それだけで終わらない。次のカードの中日戦(バンテリンドーム)では出場機会はなかったが、野手としてベンチ入りもした。
29歳は“甲子園記録”を持っている。
東京・日大三高3年春の選抜大会では、エースとして全5試合に登板し準優勝。5番打者としてもチームを牽引(けんいん)した。
大会中に計13安打。1大会の個人通算安打記録を樹立した。
母校の小倉全由(まさよし)監督は「タイミングをとるのがうまいですよ。(スイングが)やわらかい。やまちゃんのバッティングは好きだったな」と話す。
昨季安打を記録したパ・リーグの投手には、ほかにも野手顔負けの選手がいる。
東北楽天ゴールデンイーグルスの田中将大は、北海道・駒大苫小牧高3年夏は主に5番として出場。準決勝で適時打を放つなど、打者としてもチームの全国準優勝に貢献した。
昨季2打数2安打だった北海道日本ハムファイターズの加藤貴之は、社会人・新日鉄住金かずさマジックでは内野手登録だった時期もある。
投手が打席に立つことに慣れているセ・リーグにも打撃自慢がそろう。
創志学園高3年時に日本代表としてU18W杯に出場した西純矢(阪神)もその1人。W杯南アフリカ戦では指名打者として先発し、2本塁打8打点と暴れた。
投手として花が開きつつある3年目の今季、打撃については「もうだめです」と話していたが、5月18日の東京ヤクルトスワローズ戦(神宮)では150キロを左翼席へ運ぶ2ランに。大山悠輔から「ボールを一発であれだけ飛ばせるのはすごい」と絶賛された。
西純はここまでの先発3試合でいずれも安打を記録。入団以来、ほとんど打撃練習はしていないが、9打数3安打(1本塁打)の数字を残している。
広島東洋カープの森下暢仁(まさと)は、今季21打数7安打、7打点。中軸を打つ打者のような数字だ。
「しっかりとスイングしようと思って打席に立っている。初球から積極的に振った結果がつながっている」と話す。
大分商高で下級生の時は内野手としてもプレー。明大では投手ながら、通算102打数29安打(打率2割8分4厘)をマークした。二塁打を10本放っていることからも、打撃センスの良さがうかがえる。
大リーグでは今季から、ナショナルリーグもDH制になり、両リーグの足並みがそろった。
韓国、台湾のプロリーグもDH制を採用し、世界の主要リーグで投手が打席に立つのは日本だけだ。
パ・リーグの投手も打席に立つ交流戦では、改めて「9人目の野手」にも注目したい。(大坂尚子、高橋健人、辻健治)
昨季の交流戦で安打を記録したパ・リーグの投手
加藤貴之(日) 2打数2安打
山崎福也(オ) 2打数1安打
田中将大(楽) 2打数1安打
石川柊太(ソ) 2打数1安打
武田翔太(ソ) 4打数1安打
宮城大弥(オ) 6打数1安打