踏切を「命の遮断機」にしないために 目が不自由な人たちが望むこと

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松永和彦、渡辺元史、室矢英樹
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 奈良県大和郡山市の踏切で1カ月前、全盲の女性が電車にはねられて死亡した。踏切に入った後に警報・遮断機が作動し、自分がいる場所がわからなくなった可能性がある。踏切周辺の点字ブロックが劣化しており、大和郡山市は24日、補修を始めた。目が不自由な人が踏切を安全に渡れるためにさらに何が必要か。当事者団体などと探った。

カメラに映った女性の当惑

 事故は4月25日夕、大和郡山市西岡町の近鉄橿原線の踏切で起きた。近くに住む女性(50)が特急電車にはねられ、死亡した。県警によると、女性は白杖(はくじょう)を持っており、徒歩で横断しようとしていたとみられる。

 県警によると、近くの防犯カメラに当時の様子が映っていた。女性は西側から長さ約9メートルの踏切の中に入り、渡りきる前に警報機が鳴り出した。女性は立ち止まり、遮断棒が下がった後、何かに反応したように西側へ戻り始めたところ、電車と接触した。

 踏切手前には西側、東側とも道路端に点字ブロックがあった。ただ、女性は道路の真ん中を歩いており、点字ブロックには触れなかったとみられる。

 ブロックの多くは突起が劣化してすり減ったり、一部が欠損したりしていた。

 大和郡山市は24日朝から、現場の点字ブロックを取り換える作業を始めた。危険箇所を示す警戒ブロックは四隅とも6枚1セットにしたほか、進路を示す誘導ブロックも新設し、踏切手前で立ち止まるべき場所をわかりやすくした。

 一方、雨などで自転車が滑りやすくなる恐れもあるとして、道路の真ん中にはブロックは設けなかった。

 市内には近鉄線で32カ所、JR線で17カ所の踏切があるが、大部分は点字ブロックはない。上田清市長は今月20日の記者会見で「必要な所から(整備を)進めたい」と述べた。今後、地元の障害者団体と相談しながら検討するという。

当事者「点字ブロック、停止線を」

 視覚障害者の安全な歩行環境を考えてきたブルックの会(大阪市)は4月28日に現場の踏切を調査した。

 女性が歩いて来たとみられる西側から踏切への傾斜は緩やかで、踏切内も段差はほとんどない。

 視覚障害があり、白杖を持つ副代表の青木慎太朗さん(41)は「足からの情報だけでは踏切とわかりづらい」と指摘した。

 報道で防犯カメラの映像を見た代表の加藤俊和さん(77)は「女性は何かに気をとられ、踏切に立ち入っていたことに気づかなかった可能性が高い」とみる。

 加藤さんは「点字ブロックは道幅いっぱいに設置してもらいたい。踏切内にもブロックがあれば正確な方向がわかり、安心して歩くことができる」と望んだ。

 弱視の人向けには、踏切の手前に白い停止線があると助かるという。

 大和郡山市の担当者は踏切内への点字ブロックの設置について「これまでその発想がなかった」とする。今回の事故現場への設置も見送った。

 踏切を車が横断する場合は道路交通法でいったん停止が義務づけられている。警察庁の基準は、踏切前に白い停止線を引くのは、「停止する位置を示す必要がある場所」としている。奈良県警によると、県警が停止線を引いた踏切はないという。

「要望がないと・・」行政も鉄道会社も後ろ向き

 目の不自由な人たちのために、踏切内に点字ブロックを設けるのは難しいことなのか。

 実は、点字ブロックが中に設…

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