一度は消えた裁判官審査 GHQ、土壇場のちゃぶ台返し

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聞き手・根岸拓朗
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 やめさせるべきだと思う最高裁裁判官に「×」印をつける「国民審査」に、海外に住む日本人が参加できないことは憲法に違反するのか。最高裁大法廷が25日の判決で初めて答えを出します。最高裁が法律を違憲と判断する戦後11件目の例となる可能性があり、大きな注目を集めています。判決を前に明治大学の西川伸一教授(政治学)に制度の成り立ちを聞くと、日本側とGHQ(連合国軍総司令部)の綱引きが浮かんできました。

 ――国民審査は、敗戦後のいまの憲法で定められました。なぜできたのでしょうか。

 GHQは日本が軍国主義国家になった要因の一つとして、司法の独立が弱かった点を問題視していました。

国民によるチェック手段

 現在は最高裁が人事をはじめとした司法行政権をもちますが、戦前は、政府の司法大臣が司法行政権を握っていました。司法大臣の下に、現在の最高裁長官にあたる大審院長がいるという位置付けでした。

 GHQはこれを改めようとしたわけですが、司法を強くする一方で、選挙で選ばれていない裁判官が暴走する事態も防がなければいけない。国民によるチェックとコントロールの手段として、最高裁裁判官の国民審査が発想されたわけです。

 米国では、ミズーリ州など一部の州で、任期を終える裁判官を再任していいかを州民が投票で決める「州民審査」がありました。GHQはこれをもとに制度を考えたとみられます。

 ――新しい制度はすんなり受け入れられたのでしょうか。

 実は、新憲法を制定する国会の議論で、国民審査の項目はいったん削られることが決まりました。「国民に審査なんてできるわけない」と、帝国議会の議員から批判的な意見が出たのです。

「超大物裁判官」が反対

日本側の反発にGHQはどう動いたか――。後半では、その知られざる攻防、さらには海外の制度との違い、今回の裁判での国の主張について聞いていきます。

 これに対し、憲法改正を担当…

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