その日は、誕生日サプライズが用意されていた。
3月19日。
ウクライナ南東部マリウポリの製鉄所「アゾフスターリ」では、長い地下生活の一日が、この日も終わろうとしていた。
湿気でじめっとしているのに、夜になると凍えるような寒さ。
食事は少なく、水も満足に飲めない。
ロシア軍の爆撃は連日激しさを増していく。
ウクライナ兵はいつ出られるかを教えてくれず、希望が見えない。
避難生活が始まって2週間が過ぎ、マリウポリ出身のラリサ・ソロプさん(49)は、そんな毎日を送っていた。
しかし19日は、シェルター内の雰囲気がいつもと違った。約40人いた避難者のうち、1人の誕生日があったからだ。
飾られた風船、コロッケで作った小さなケーキ
それまでシェルター内で誰か…