和歌山県の40代の女性は、ダイエットをしているとはいえ、周りが心配するほど異常にやせてきた。ふらふらになって仕事をしている姿を見た妹は、嫌がる女性を無理やり病院に連れて行った。2020年秋、女性は膵臓(すいぞう)がんと診断された。高齢の母とくらしていたが、近くに住む2人の妹に生活を支えてもらい、通院しながら抗がん剤治療を始めた。だが効果はあまり見られず、しびれや吐き気に悩まされた。
徐々に背中の痛みが強くなり、病院が処方した薬ではうまく抑えられなくなった。自宅の2階から1階に聞こえるほど大声で叫んだり、夜も眠れなくなったり。21年秋、がんがおなかの中で散らばっていることがわかった。医師からは「何もしなかったら余命3カ月」と言われた。
死への恐怖から食欲失せ
「最期、どうやって死ぬん?」「膵臓がんの最期は苦しいの?」。女性は妹に、死への怖さを打ち明けた。精神的にも不安定になり、家の廊下を往復して気持ちを落ち着かせていた。食欲も失せ、1日1食分もとれなくなった。
新型コロナウイルスの流行で、病院の面会制限が続く。妹は往診にも対応する診療所を探し、三重県紀宝町の「くまのなる在宅診療所」を訪ねた。最期をどう過ごすか――。姉妹できちんと話し合ったわけではないが、在宅で過ごすことが自然な流れだと考えた。
同年12月、濱口政也院長(40)と女性が初めて対面した。だが、女性は素っ気ない態度で、質問にも「そうです」などと言葉少な。自身のことを詳しくは話してくれなかった。
記事の後半では、大規模な遺族調査からみえてきた課題について、紹介します。
■薬を変え、戻った食欲…
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