「ATMに長蛇の列」。こんなニュースは、戦争に限らず、社会の混乱があった場合に世界中でよく目にします。
ところがロシアによる全面侵攻で国土の広い部分が戦闘に巻き込まれたウクライナでは、こうした話をほぼ聞きません。
いったいなぜなのか。経済活動の再開が目立ち始めた4月下旬、ウクライナ全土に2千万人の顧客を持つ最大手銀行、プリバトバンクの幹部に聞きました。
「準備はしていた。でも起きるとは考えていなかった」
プリバトバンクのチーフ・ビジネス・オフィサー(CBO)、ラズワン・ムンテアヌ副会長は2月24日早朝、銀行からの連絡でロシアによる全面侵攻を知った。
「胸が痛んだということに尽きます。この時代に欧州で全面戦争が起きる。いまでも消化できないほどのショックでした」
準備はしていた。国内外の関係者から、侵攻についての情報が寄せられていた。1~2月、行内では特別チームが編成され、複数のシナリオに基づいた事業継続計画(BCP)がつくられた。
だが、その日が来るとは思っていなかった。それも、複数のシナリオの中でも最悪に近い形で。
「起こらないことを望んでいたということもありますが、それよりもむしろ、本当に起きるとは考えていなかったんです」
結果的に、プランは生きた…
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【視点】以前からウクライナをウォッチしてきた人間にとっては、あのプリヴァトバンクが「美談」の主人公として取り上げられるようになるとは、隔世の感がある。 プリヴァトバンクは、ウクライナ屈指の政商であるコロモイスキー氏が作った銀行。2014年のユーロ