保育園、リモート監査で大丈夫? 厚労省案に「安全確保に疑問」の声

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中井なつみ、田渕紫織
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 保育園が適切に運営されているか、自治体の職員が園に出向いてチェックする「実地検査」について、厚生労働省が、コロナ禍を理由に書面やオンラインでも可能とする児童福祉法の施行令改正案を示したところ、相次ぐ反対の声を受け、実施できない状態になっている。当初は4月にも実施の予定だったが、同省は「原則はあくまでも実地検査」としながらも、「どのような場合に例外を認めるか検討したい」としている。

 「実地でなくても良い、としてしまえば、問題を隠蔽(いんぺい)しやすくするだけ」「0歳児の子どもは、何か問題がおきていても誰かに伝える術を持ちません」「臭い、汚れ、整理整頓の欠如、子どもや職員の表情など、(園に行けば)さまざまな情報が得られます」……。

パブリックコメントに反対多数

 厚労省が昨年末に施行令改正案を示したことを受けて、12月~今年1月に募集したパブリックコメントに計280件の意見が寄せられた。同省はホームページにこのうちの10件を公表しているが、改正案に反対とみられる内容が多い。同省は「寄せられたコメントを賛成、反対と判断する立場にない」として、賛否の内訳を示していない。

 実地検査は、施行令で「1年に1回以上、自治体が保育園の実地検査をする」と定めている。

 自治体の職員らが園に直接出向き、職員配置が十分か▽温度や湿度、換気などの環境は適切か▽アレルギーのある子どもへの配慮ができているか▽睡眠中の事故防止などの対策ができているかなどをチェックする。指摘項目の情報は自治体ホームページなどで公開され、保護者が園を選ぶときに参考にすることもある。

大阪府茨木市などが緩和を要望

 厚労省は今回、「実地」の文言を削除する改正案を示し、パブリックコメントにかけた。

 自治体によるチェックそのものがなくなるわけではないが、書面やオンラインでの検査も可能とする内容で、今月19日に会見した全国保育団体連絡会(東京)は「コロナ禍の例外的な措置といいながら、実地に行かないことが恒常化してしまうのではないか」などと指摘した。同会は、6月末まで反対の立場を表明する署名活動を実施している。

 同省によると、そもそものきっかけは、昨年の地方分権改革に関する提案募集の中で、大阪府茨木市が「実地によらずとも監査等の実施ができるよう、書面やリモート等による方法も可能としていただきたい」と要望したことだった。これに、複数自治体が賛同したことで検討を開始したという。

 茨木市の担当者は「役所の職員にも感染者が多い時期があり、実地検査の手法しか認められていなければ、監査ができないことになってしまうと考えた。実地以外でも、法的根拠のある手段が必要だった」と説明する。

 高まる反発の声に、同省は「原則は実地検査であるという考えは変わらない。例外的に書面やオンラインでも可能にするという趣旨だ。どのような場合に例外を認めるのかは、今後しっかり検討していく」(担当者)と説明する。ただ、「新型コロナ以外の感染症が流行する可能性もあり、他の理由で例外を認めない規定では意味がない」として、コロナ禍の時限措置ではないとしている。改正は夏以降に先送りされている。

 保育園を考える親の会の顧問、普光院亜紀さんは「保育事故があるたびに、行政が実地に立ち入ることの必要性を痛感する。実地検査は意見の言えない子どもの権利の保障で、子どもの命を守るガードレールとしての存在だ」と話す。

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    田渕紫織
    (ハグスタ編集長=子育て、社会保障)
    2022年5月27日1時44分 投稿

    【視点】子どもが保育園で命を落とす事故が起こるたびに、検証委員会からしばしば、行政による監査が不十分だったと指摘されます。 それを受けて行政は「監査を強化します」と言うものの、実際は人員や予算などの「先立つもの」がないことが多いです。 この不十