残された柴犬「海」と桜は伝える 確かに生きた、遼ちゃんの証しを

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中塚久美子
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 17年前のJR宝塚線(福知山線)脱線事故で負傷し、その後自ら命を絶った男性がいた。息子をしのんで桜の木を植え、子犬を育ててきた母親も昨年秋、亡くなった。残された桜と犬は、事故の記憶と命の証しとして、ゆかりのある人たちが見守っている。

 兵庫県宝塚市の岸本遼太さん。22歳の誕生日だった2005年4月25日、京都市の大学へ向かう途中、乗っていた快速電車が尼崎市のカーブで脱線した。

 遼太さんは4両目に乗っていた。けがは首の捻挫だったが、くの字につぶれた2両目の様子を目の当たりにした。

 05年6月、パニックを起こし、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された。自宅に引きこもるようになり、107人が亡くなった事故で生き残った苦悩をブログにつづった。

 事故から3年5カ月後の08年秋、遼太さんは亡くなった。

 遼太さんの父の義彦さんは06年、家族でよく訪れていた京都府宮津市の天橋立沖で釣り中に誤って海に落ちて亡くなっており、母の早苗さんは一人になった。

 15年、早苗さんは、事故の犠牲者の名を刻んだ現場の慰霊碑に遼太さんの名を加えてほしいとJR西日本に要望した。ただ、事故で直接亡くなった人ではないとの理由で、望みはかなえられなかった。

 早苗さんは17年、自宅庭に桜の木を植えた。遼太さんを思い、「遼ちゃん桜」と名付けた。

 遼太さんは亡くなる前、心を…

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