ロシアが国際社会の規範に与えた二重の打撃 非欧米諸国が抱える矛盾

有料会員記事ウクライナ情勢

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あすを探る 市原麻衣子・一橋大教授

 ロシアのウクライナ侵攻は、国際秩序の根幹を成す「国家主権」と「人権」という二つの規範に、直接・間接の打撃を与えている。直接的にはウクライナが今まさに主権国家として存続の危機にさらされ、人々が生命を奪われている。それと同時に、副次的には欧米とアジア・アフリカなどの非欧米諸国の間で対ロ姿勢に温度差が生じることで、国際社会の規範に脆弱(ぜいじゃく)性が生じ始めている。

いちはら・まいこ 一橋大学教授、国際政治学。著書に『Japan’s International Democracy Assistance as Soft Power』など

 ウクライナ及び支援する欧米諸国が侵攻当初からこれまで一貫して妥協しない姿勢を強く示してきたことには理由がある。非人道的行為や武力による現状変更を容認しないという国際社会の原則を維持するためには侵略の結果がロシアの利益であってはならないし、また、ロシアは「力の論理」に敏感だからである。

 しかし、オースティン米国防長官によるロシア弱体化を望む発言のように欧米側からの発信にタカ派的な内容が含まれ、この戦争が権威主義対民主主義の文脈で語られると、一部の非欧米諸国に居心地の悪さを与えた。ただでさえロシアとの関係維持を望む国々に、偽善的かつイデオロギー的なにおいを感じ取らせてしまったためである。自由な選挙で選ばれたウクライナのゼレンスキー政権を転覆させようとするプーチン氏の侵略に対する抵抗は、普遍的価値としての自由をかけた実存的な戦いであるにもかかわらず、である。

 ロシアを非難する国連総会決議や同国の国連人権理事会理事国としての資格停止案に反対や棄権を選択する国々が出たことも、東南アジア諸国連合(ASEAN)が停戦を求める声明においてロシアを名指しすることを避けてこの戦争全体を問題視したことも、侵攻側と被侵攻側の区別を曖昧(あいまい)にしてしまっている。

 ロシア批判を控える国々は自…

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