保育園児の置き去り、防ぐには IT技術は「自動ブレーキ」になるか

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南日慶子、田渕紫織
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 保育中に子どもを見失ってしまい、命に関わるケースが起きています。こうした保育事故を防ぐため、保育士の目だけに頼るのではなく、ITを生かせないかと模索する保育園があります。導入を考えるきっかけの一つが、過去に起こした園児の「置き去り」でした。保育園にとって技術は、車でいうところの「自動ブレーキ」のような存在になるのでしょうか。

 千葉県内で「キートス」という認可保育園13園を運営するハイフライヤーズ。昨年10~11月、千葉市にある2園で、端末を使って園児たちの居場所が把握できる仕組みを実証実験した。

 2人に腕時計型、20人に名札型のウェアラブル端末をつけ、園内に設置したカメラと組み合わせることで、園児の居場所が分かる。脈拍などの生体データで体調の変化も察知できるシステムだ。

過去に起こした「置き去り」きっかけ

 導入のきっかけのひとつが、2年前の「置き去り」だ。

 「運営する1園で、公園で遊んでいる途中に園児が公園から出てしまい、一時行方不明になってしまったのです」と、キートス統括園長の日向美奈子さん。

 園児は近くのコンビニエンスストアで保護された。けがなどはなかったが、「うちの園でもこうしたことが起きてしまうんだと。でも、より気をつけることでしか対策がなかった」。

 昨夏には、福岡県で通園バスに置き去りにされた園児が熱中症で死亡する事故があった。「置き去り」を起こしてしまった経験から「保育者のミスの代償が子どもの命では言葉がない」と危機感を強めた。

 保育事故の防止に、ITを使えないか、動き出した。

 ICタグを開発する凸版印刷に相談し、工場管理向けに開発したシステムを活用することになった。作業員の労務管理や健康状態を可視化するために使われる仕組みで、園児に端末をつければ居場所を取得できる。保護者の同意を得て、2園で2週間ずつ、計約1カ月間、実証実験をした。

 園児がつけた端末からは、近距離無線通信(Bluetooth)で、園内の各部屋にいる人数や、部屋の移動が把握できる。腕時計型の端末では、脈拍やストレス値といった生体データ、転倒回数を測定できる。園内のカメラの映像と合わせることで、園児ごとの行動がわかり、生体データを使えば体調の変化もわかる。

 実証実験では発見もあった。園内のカメラがとらえた映像と音声に生体データを組み合わせて検証すると、友達が嫌なことをされた場合、その様子を見た園児のストレス値も上がることがわかった。「保育者の目からみると、嫌なことをした子とされた子の2人にしか目がいかない可能性が高い。データをみると周りにいる子たちにもストレスがかかる。保育者だけでは気づけないものがある」と分かった。

 凸版印刷とは今後も実証実験を重ねるといい、導入を目指して話し合っている。IT大手グーグル傘下でウェアラブル端末を手がける「フィットビット(Fitbit)」にも相談するなど、子どもの命を守る研究を共同で進められる企業も探しているという。

 運営会社のハイフライヤーズはこうした技術を、車でいうところの「自動ブレーキ」ととらえる。保育士は人間なので気をつけていてもミスは起きてしまう。それを先端技術で防ぐ、という意味だ。

 保育士の側が「信用してもらえていない」ととらえてしまう可能性もあるが、「自動ブレーキがあるからブレーキを踏まないという人はいない。保育士がITによって安心感を持って保育ができれば、保育の質の向上にもつながる」と考えているという。

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