小和田恒氏 「国際法と国際関係の相互作用」で秩序の再構築を

編集委員・藤田直央
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 国際司法裁判所(ICJ)で日本人初の所長を務めた小和田恒氏(89)が5月24日、オランダのライデン大学で講演した。ロシアによるウクライナ侵攻について「国連憲章による集団安全保障への信頼を完全に破壊した」と強調。「国際法と国際関係の相互作用」をふまえた新たな角度から国際秩序を立て直すことが急務だと訴えた。

 小和田氏は元外交官で、ロシアの前身ソ連との北方領土交渉も担当した。外務事務次官や国連大使を経て1999年に退官。国際法学者でもあり、オランダ・ハーグのICJで2003~18年に判事を務めた。講演はかつて教壇に立った東京大学とライデン大学による「小和田記念講座」の開始を記念して行われ、ネットでも中継された。

 英語での講演で小和田氏は、ロシアについて「国連の責任ある創設者の一員であり、(国際秩序を侵す国を制裁する)集団安全保障という新たなシステムを担う特別な力を与えられた安全保障理事会常任理事国だ」と説明。ウクライナへの侵略を「古典的な国際法の(違反という)意味ではもちろん、常任理事国としての正統性を完全に拒んだという意味で大変ショックだ」と語り、「この破壊は、人類が築いた国連の集団安全保障に極めて深刻な被害となる」と批判した。

 また、同様の国際秩序への挑戦は、米ソが対抗した冷戦が89年に終わった後、イラクがクウェートを侵略した湾岸危機から繰り返されていると述べた。その上で、「(米国)一極や多極間のバランスによる国際秩序は生まれないまま、各国が偏狭な国益を追求している」と指摘した。

 さらに、平和構築の枠組みを立て直す方策についても言及。各国の力がぶつかり合う国際関係の現実を当然視するのでも、世界がルールで一国のようにまとまる理想を追うだけでもなく、「国際法や地政学、歴史、人々の感情を含む文化といった多角的な分析の融合を提案する」と強調。こうした「国際法と国際関係の相互作用」の研究で「東アジアと欧州の若者たちが、全世界に受容される普遍的価値の枠組みを共有するよう心から期待する」と呼びかけた。(編集委員・藤田直央

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    藤田直央
    (朝日新聞編集委員=政治、外交、憲法)
    2022年5月27日9時50分 投稿

    【視点】取材後記的に。この小和田記念講座は昨秋からの予定でしたがコロナ禍で遅れ、その間にウクライナ危機が起き、タイムリーなものとなってしまいました。オランダの名門ライデン大学の教会のような部屋での開講式で、司会者は「欧州に初夏と同時に冬が訪れました