沖縄に魅せられ、島唄200曲の解説本 クラファンに300万円

岡田将平
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 沖縄が日本に復帰して50年のこの夏ごろ、200曲もの「島唄」を解説した本が広島から世に出そうだ。独特な沖縄民謡の発音や意味を伝えてきた演奏者が、クラウドファンディング(CF)で300万円近くの出版資金を集めている。変わらぬ米軍基地の重圧も、文化を通して見つめる。

 JR広島駅近く、新幹線高架下のそばで、南国にいざなうかのような独特の音色が流れ出す。広島市東区の沖縄料理店「ゆがふ家」で、店主の関洋さん(62)が沖縄の弦楽器「三線」をはじく。

 「おもしろいのは沖縄の音階。『レ』と『ラ』を抜いて『ド・ミ・ファ・ソ・シ・ド』となる」。コロナ禍のいまは店は閉め、三線教室に専念している。

 沖縄民謡の歌詞の意味を説明したり、発音を解説したりするブログを始めて17年。数えれば500曲近くにもなった。

 ブログは「たるーの島唄まじめな研究」と銘打っている。「たるー」は、沖縄の物語の登場人物の名前をもじった自分のニックネームだという。

 本にできるかな。当初は自費出版を考えていた。ブログの読者らのすすめで、昨年10月にインターネットのCFで資金を募り始めたところ、今月中旬までに290万円以上が集まった。

 目指すは385万円。達成できなくても自費で補い、夏ごろには200曲以上の解説を収録した本を3520円(税込み)で販売する運びだ。CFの支援者にはこの本を届ける。

 関さんは宮崎市で育った。近くに沖縄出身の人たちが暮らす地域があった。

 ♪ハイサイおじさん、ハイサイおじさん――。中学生のころ、ラジオからテンポの良い曲が流れてきた。「何だこの音楽。自分たちの聞いてきた音楽と全然違う」。これが沖縄の音楽との出合いだった。

 大学進学を機に広島で暮らし始めた。30代になり、缶を使った「カンカラ三線」を自作し、沖縄料理店で三線を学んだ。「うちなーぐち(沖縄の言葉)」を研究する男性とも出会った。

 言葉も独特だ。たとえば、沖縄が舞台のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」。沖縄の母音は「あいうえお」ではなく、「あいういう」で構成される。「きも(肝)」は「ちむ」に置き換わる。

 どんどん魅了された。40代からのブログ発信では、唄についての詳細な解説に努めている。ただ、その背景にある沖縄の歴史といまも見つめてきた。

 20代で初めて沖縄を訪れた時、観光バスが広大な米軍基地の横を通った。その反対側の住宅地を指しながら、ガイドの女性が皮肉交じりに現状を説明した言葉が忘れられない。「(米軍基地のために)皆さんが税金を払っているおかげで、私たちは狭い所に押し込められています」

 国策の名の下、沖縄には今も在日米軍の専用施設の約7割が集中し、事件事故も絶えない。「誰のせいなんでしょう」。関さんの自問自答は続く。

 かつて琉球王国は、唄を含めた文化を外交に生かし、中国や日本と渡り合った。ロシアが武力でウクライナをねじ伏せようとする中、むしろ、そんな沖縄のあり方から学ぶものがあるのではないかと関さんは思っている。

 関さんは28日午後6時から、広島駅そばのビッグフロントひろしま6階の市総合福祉センターで「沖縄と私」と題し講演する。参加費500円(資料代)。問い合わせは主催者の「aal.げんき塾」(090・3866・4863)。

 クラウドファンディングの詳細はホームページ(https://taru.yugafu.jp/別ウインドウで開きます)で。(岡田将平)