中絶可否が移住理由に? 半世紀ぶりの判例変更、何がどうなる?

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ニューヨーク=藤原学思
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 米国で、人工妊娠中絶をめぐって激しい議論が起きている。連邦最高裁が、中絶を合衆国憲法上の権利だと認めた1973年の「ロー対ウェイド判決」を覆す可能性が高いからだ。

 実際に73年判決が覆されれば、米国の政治や社会に大きな影響を与えることになる。では、米国で中絶が一切できなくなってしまうのか。中絶を実施する現場や女性たちには、どんな意味を持つのか。

 米メディアにリークされた連邦最高裁の多数意見の草案は、「米国内における全ての中絶を禁じる」というものではない。「中絶は憲法上の権利である」「胎児が子宮外でも生存可能になるまで中絶は認められる」という73年判決を無効にするものだ。現在おおむね22~24週まで認められる中絶をどの程度規制するのかが、米国の各50州それぞれに委ねられることになる。

 ここで、米国の政治事情が関係してくる。

 たとえば東海岸のニューヨーク、西海岸のカリフォルニアといった州はリベラルな市民が多く、「中絶は人権だ」という考えが浸透している。議会は民主党が多数派を占め、知事も民主党だ。こうした州では、仮に73年判決が無効化されたとしても、独自に中絶の規制を厳しくすることは考えられない。

 一方、今回の裁判の舞台となったミシシッピ州がある南部、また中西部など、共和党が優勢を占める保守的な州では「中絶は殺人だ」といった考えが強く、様相が異なる。

 中絶の権利を支持する「ガットマッチャー研究所」によると、全米50州のうち26州で、連邦最高裁が73年判決を覆すのと同時か、あるいはその直後に、中絶が厳しく規制される見通しという。73年判決以前の州法が残っていたり、すでに「妊娠6週以降」の中絶を禁じる州法が成立していたりするためだ。

 同研究所はまた、20年の年末の時点で、全米13~44歳の女性のうち、実に58%に当たる4千万人近くが、中絶に対して厳しい姿勢をとる29州に暮らしていると見積もっていた。

 エルミニア・パラシオ代表は、草案のリーク後に、「何百万人もの人びとの権利、身体の自律性と尊厳を完全に無視している」と批判する声明を発表した。特に、低所得者、黒人やヒスパニック、若者など、「構造的な不公平によって疎外、抑圧されている多くの人びと」が打撃を受けると指摘している。米国ではそうした女性が望まない妊娠をする割合が高いにもかかわらず、現在の居住地から州境をまたいで中絶措置を受ける経済的余裕もないことが多いからだ。

 中絶に対して、極めて厳しい姿勢で臨んでいる州の一つが南部オクラホマ州だ。

 同州では4月、人工妊娠中絶…

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