九回裏、絆は強まった ろう学校、慶応、ルーテルの高校連合チーム

佐藤太郎
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 持ち味の「あきらめない野球」を最後まで貫いた。結成2カ月で高校軟式野球の埼玉県大会を制した大宮ろう・浦和ルーテル・慶応志木の3校連合が26日、関東大会に出場。1回戦で八千代松陰(千葉)に敗れはしたが、チームメートが今までの戦いをたたえ合った。

 「よそ行きではなく、自分たちの普通の野球をやりたい」。試合前、慶応志木の松田恒尚監督(55)が話した通り、選手はのびのびと戦った。二回、浦和ルーテルの小林雄一郎選手(3年)が適時打。大宮ろうの武内優也選手(3年)がガッツポーズをしながら、先制点を踏んだ。

 三回に逆転を許したが、ベンチに戻って円陣を組む選手たちに松田監督が指示を出した。「次の1点をどっちがとるかで、試合の流れが決まる。しっかりやろう」。大宮ろうの野沢寛之教諭(42)が手話で伝えた。指示通り、選手は八回まで食らいついた。

 だが、九回に一挙6点をとられた。それでもベンチの中は盛り上がっていた。

 慶応志木の捕手・中島銀志選手(2年)も大きな声を出し続けた。

 4月に大宮ろうと初めて顔をあわせた時も「耳が聞こえないからといって、特別意識はしなかった」。選手同士すぐに打ち解けた。ベンチで「何、あんなところでミスしてんだよ」と笑いながら冗談も言い合える仲になった。

 そんな3校の絆が高まったのが、九回裏だ。

 出塁した大宮ろうの松永隼弥選手(3年)が慶応志木の金子蒼良選手(2年)の二塁打で1点を返す。なおも無死一、二塁の好機。ベンチはお祭り騒ぎとなった。「あきらめない野球」の本領発揮だった。

 あと一打が出ず、2―9で敗れた。それでも武内選手は言った。

 「お互い信頼関係が築けたから、ここまでくることができた。ありがとう」

 慶応志木は部員がそろい、夏は単独チームで出場する。試合後、選手や選手たちの家族を前に野沢教諭が話した。

 「みんなのあきらめない野球を九回に見せてもらった。慶応は夏からはライバルになるが、同じ野球をする仲間としてこれからも仲良くつきあってほしい」

 家族から、試合以上の拍手が起こった。(佐藤太郎)