部活の地域移行、そのカタチは? 先行する白岡市に詳しく聞きました

編集委員・中小路徹
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 公立中学校の休日の部活指導が、民間スポーツ団体や地域の人材に委ねられる。

 部活動の「地域移行」と呼ばれているもので、2023~25年度に集中して進めることが、31日のスポーツ庁の有識者会議で、提言として出される見込みだ。

 地域移行は、少子化による廃部で子どもの選択肢が減っている実情や、教員の長時間労働の課題の解決などを目指すためだ。

 実際に、どんな形になるのだろう。

 国は昨年度から、先行して取り組む自治体を各都道府県に置き、課題の洗い出しなどを進めてきた。

 その一つが、埼玉県白岡市。昨年度、市内にある全4校の計10の部で、11月から土日の活動を地域の指導者に委ねた。

 剣道ソフトテニス、軟式野球、バスケットボールバレーボールの運動部と、吹奏楽部。

 まず場所はどうしたか。

 学校外の施設を使う選択肢もあるが、白岡市は、平日に活動する校内の体育館やグラウンドを使い、そこに指導者が来る形式にした。

 「事前に生徒、保護者、教職員にアンケートをとったところ、『学校をそのまま使いたい』という声が多かった。形を変えないようにしました」と、市の教育指導課で地域部活動を担当する石島隆志さん。

 指導者はどんな人が担ったのか。

 派遣されたのは計22人。市の体育協会総合型地域スポーツクラブに登録されたコーチや、近隣の大学の学生らのほか、10人は平日も指導している部の顧問教員が指導した。

 移行は、教員の負担軽減が目的の一つ。だが顧問が土日の指導も希望することがある。その場合は、地域人材として任用され、教員とは別の報酬を受け取って教えることができる。

 指導者の謝金は時給で1228円。これは市の非常勤職員の報酬にのっとった額だという。

 指導者の派遣と謝金の支払いなどの実務は、PTAのOBを中心とした任意団体に、市が委託した。活動で使う学校施設の鍵の管理も、この任意団体が担った。

 生徒や保護者の反応はどうだったか。

 メリットとしては、「専門的な指導が受けられること」が挙がった。

 土日の活動の自由度も上がる。スポーツ庁は「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」で、平日1日、週末1日の週2日の休養日を求めており、土日の両日の活動は原則できない。

 ただ、地域の活動となれば、生徒や指導者の希望で活動計画を立てられる。実際、土曜に練習、日曜に練習試合をするパターンがあった。こうなると、「やりすぎ」の懸念は出ることから、白岡市では、土日両日に活動した場合は、平日の活動を3日以内とするガイドラインを設け、過熱化を防ごうとしている。

 課題はどうか。

 今後、地域移行をすべての部に広げていくうえで浮き上がったのは、指導者の確保だ。

 市が委託したPTAのOBの任意団体では、主に個人的なつながりで人材を探したが、限界がみえた。

 そこで、今年度は市の生涯学習部に、人材バンクを設置。市が広報に努めて人材を集め、指導者を登録し、各校のニーズに応えて派遣する形を目指している。

 そして、地域部活動全体を見渡すコーディネーターも任用する。これは退職した元校長など、学校に詳しい人に任せる予定だ。

 「保護者からは、『勝利至上主義に陥らない、教育的な部活動を』という声が大きい。そこで、登録された指導者には、競技に勝つこと以外の意義があることを理解してもらうための勉強をしてもらいたい。コーディネーターには、それを促す役割も期待しています」と石島さん。

 また、平日に指導する顧問と、土日に教える指導者との密な連携が必要になることも課題だ。両者に方針の違いがあると、土日にたっぷり指導する地域人材の影響力が部内で強くなり、生徒たちが顧問の言うことを聞かなくなるなど、パワーバランスが崩れてしまう懸念もあるからだ。

 ただ、石島さんは「地域の人材がイニシアチブをとり、平日の活動は、生徒たちが主体性を持つ流れをつくれた部もある。少しずつ、それぞれの部のスタイルができています」と話す。

 地域部活動は、指導者への謝金が生じることから、受益者負担が必要になる。生徒や保護者にとってデメリットだ。白岡市では昨年度は負担を求めなかったが、今年度からは、額は未定だが、生徒側に費用を払ってもらうという。

 今年度は、各校で土日の地域移行の規模を大きくしていく予定だ。(編集委員・中小路徹

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    平尾剛
    (スポーツ教育学者・元ラグビー日本代表)
    2022年5月31日17時38分 投稿
    【解説】

    部活動のあり方を変えようというこの営みを私は支持します。教員が顧問を務め、日々の練習での指導から試合の帯同までのすべてを担うというのは、もう現実的ではありません。授業づくりなどただでさえ多忙を極めるなかで、さらに部活動もとなれば生徒への教育

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    内田良
    (名古屋大学准教授・教育社会学)
    2022年5月30日12時59分 投稿
    【解説】

    部活動の地域移行は必須とされて、その議論や動きが着々と進められていくなかにあって、ここ一年ほどの間に、具体的で現実的な問題が次々と浮かび上がってきています。記事中にも指導者の確保などの課題とその対応が示されています。 私が記事でとくに重要