もう会わないと思った中継地での出会い 運命を変えた空港での4時間

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田中紳顕
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 「携帯を充電できる場所知らない?」

 2018年9月、ジョージアへ向かう中継地のカタールの国際空港。大木千加さん(29)は男性に英語で突然話しかけられた。赤いタンクトップに細めのジーンズ。くっきりした目鼻立ちで190センチほどの長身。ナンパだろうか。そう警戒しつつ、そばにあるコンセントを指さした。

 飛行機の離陸までまだ4時間もある。男性は隣のベンチに座った。しばらく黙ってスマホをいじっていたが、また声をかけてきた。

 「どこから来たの?」

 男性は、ミシャと名乗った。自分より3歳年上で、母国ジョージアに帰国する途中という。ぽつりぽつりと会話を続けた。「俺、芥川が好きなんだ」。好きな本や映画、互いの故郷のことを教え合ううちに搭乗時間になった。別れを告げ、同じ飛行機に乗り込んだ。もう会うことはないと思った。

 直前に3年半働いた映画や演劇の制作会社を辞め、将来に迷っていた。4歳からバレエやミュージカルを習い、いつもそばに舞台があった。憧れは宝塚音楽学校。だが、2度目の不合格通知を受け取った高1の春、「もうやり切った」と舞台を降りた。

 大学卒業後、演劇と関わりが深い会社を選び、経営系の事務仕事を任された。だが、間近でプロの演技を見ながら、舞台への未練が残っている自分に気づいた。「もう一度、踊りたい」と思った。

 退職後、演技の勉強をしようと考えた。時間ができ、手始めに学生時代から気になっていたジョージアの人形劇を現地で見る旅を計画し、カタール経由でジョージアへ向かっていた。

 ジョージアの首都トビリシの…

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