銀行協会が伝えた「070」で始まる連絡先 疑念は確信に変わった

渡辺元史
[PR]

 施術に訪れた高齢女性宅で女性が電話をしているのを不審に思い、声をかけて詐欺被害を防いだとして、奈良県警郡山署は27日、鍼灸(しんきゅう)師の井上竜太さん(33)に感謝状を贈った。詐欺を見破った井上さんは「身近な人が被害にあわなくてよかった」と話した。

 生駒市の「からだ元気治療院」で勤務する井上さんが、大和郡山市の80代女性宅を訪ねたのは4月25日午後2時ごろ。3年ほど前から週に3度ほど診療に訪れていた。いつもならインターホンを押す前に玄関先で出迎えてくれるが、この日は玄関そばで受話器を手に焦った様子で手招きした。

 女性の様子を不審に思い、奥の部屋で施術の準備をしている間も女性の会話を注意深く聞いた。女性が「銀行協会さん」と相手に呼びかけたのを聞いて詐欺を疑った。詐欺グループが使う架空の組織だとテレビや報道で聞いたことがあった。

 来客を理由に女性が電話を切った。女性が電話の内容を書き留めたメモにあった「銀行協会」の電話番号は「070」で始まる携帯電話のようだった。「協会の連絡先が携帯電話っておかしくないか」。疑念はさらに深まった。

 女性の話では、この日の午後0時半に百貨店の衣料品売り場の担当者を名乗る女から電話があったという。「あなたのクレジットカードの偽造カードで支払おうとしている客がいる。銀行協会に連絡して欲しい」。慌てた女性は言われるがままに電話をかけた。1回目はつながらず、しばらくして折り返しかかってきた。「クレジットカードの引き落とし口座はわかりますか」「どこの銀行ですか」。女性が言いよどんでいたところ、井上さんが訪ねてきた。

 話を聞いた井上さんは、百貨店に電話。電話内容の真偽を確認したところ、「お客様にそのような電話はしません。警察に連絡して下さい」という。詐欺だと確信し、調べた事実を女性に伝えた。「いわれてみたら詐欺かもしれない」。納得した女性と最寄りの交番に駆け込んだ。

 井上さんは「(自分を)孫のようにかわいがってくれる女性。被害を防げて本当に良かった」と話した。

 署によると、百貨店や家電量販店の担当者を名乗る電話からキャッシュカードをだまし取られる事件は多い。一方、この手口は受け子と呼ばれる人物が被害者宅を訪れて受け取る必要があり、コロナ下では減少傾向にあるという。

 市職員を名乗る人物から「還付金がある。ATMで操作すればすぐ受け取れる」などと電話がかかってくる還付金詐欺は増加傾向にある。郡山署管内では今年に入り10件の特殊詐欺が発生。うち7件が還付金詐欺だという。

 相手の言うままにATMを操作すると、いつの間にか相手の口座に送金をしてしまっているケースが多い。巧妙で、詐欺だと気づくまでに1カ月間かかった被害者もいたという。

 県警はホームページで実際の還付金詐欺やオレオレ詐欺の音声を公開している。署生活安全課の山本浩伸課長は「電話でお金やキャッシュカードの話が出たら詐欺だと思って」と話した。(渡辺元史)