ロシアを過度に追い込まないために、ウクライナも一部の領土を譲る必要がある――。そんな論調が米国の一部から相次いで出たことが波紋を呼んでいる。ウクライナのゼレンスキー大統領は、当事者であるウクライナ国民の立場を理解していない発言だと強く反発している。
波紋を呼んだ一つ目の発言は、キッシンジャー元米国務長官(99)によるものだ。23日、世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)の場でこう述べた。
「理想的には、(ロシアとウクライナの)境界線は以前の状態に戻ることだ」
発言の前段では、ウクライナが欧州とロシアの間の橋渡しとなる「中立的な国家」となることが最終的な目標になり得るとの考え方を示唆。「ロシアが中国との永続的な同盟関係に追い込まれることのないようにすることが重要だ」とも語った。
キッシンジャー氏の発言は、欧州や世界のバランスを保つために、ウクライナ側が領土の一部をロシアに譲るよう求める内容だとして批判を呼んだ。「以前の状態」とは、今年2月の侵攻前にクリミア半島や東部ドンバス地方の一部をロシア側が一方的に占領していた状態を指すと理解できるためだ。
NYTの論説も波紋
波紋を呼んだ二つ目は、米紙ニューヨーク・タイムズが22日の紙面に掲載した論説だ。
記事は、ウクライナがクリミ…
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【視点】 キッシンジャー氏の発言とニューヨーク・タイムズの論説は、ロシアのテレビでも大きく取り上げられ、繰り返し放送されました。その際には、リアリズム外交を体現するキッシンジャー氏と自由、民主主義の価値観を重視するリベラル派のニューヨーク・タイムズ
【視点】 戦争は始めるより終わらせるほうが難しい。ここには、ウクライナとロシアのあいだでいまも流れる血をいかに早急に止めるのかという問題と、両国のみならず広く国際社会が、エスカレーションの可能性を含めて今後の展開をどう捉えるか、中長期の国際秩序の在