ロシアのウクライナ侵攻が始まって3カ月が過ぎました。両軍の激しい攻防が続く中、戦争終結の見込みはあるのでしょうか。ロシアが併合したウクライナ南部クリミア半島の奪還までをウクライナ軍は目指すのか、それとも2月の侵攻直前の位置までロシア軍を押し戻すのが最終目標なのか。ウクライナ軍参謀本部での勤務経験もある予備役大佐、オレフ・ジダーノフ氏に、どんな終戦のシナリオが考えられるのか聞きました。
――ウクライナのゼレンスキー大統領は5月21日のテレビ番組で、ロシア軍を2月の侵攻直前の位置まで押し戻せば「勝利」との認識を示しています。一方、5月中旬の世論調査では、82%の人が「たとえ戦争が長引いたとしても領土を手放してはならない」と答えています。戦争終結のシナリオをどう考えればいいのでしょうか。
私もこの82%の一人です。私たちにとっての「勝利のライン」とは、1991年、旧ソ連の崩壊に伴って各国が承認したウクライナの国境のことです。ウクライナの人々は(親ロシア派武装勢力が支配する東部の都市)ドネツク、ルハンスクやクリミア半島までを戦って取り戻す決意でいます。
Oleg Zhdanov
1966年生まれ。87年に砲兵学校を卒業し、旧ソ連の自走砲部隊に所属。ウクライナ軍の教育機関で教えるなどした後、2004~07年、ウクライナ軍参謀本部の作戦局に勤務し、大佐の階級で予備役に。ウクライナメディアに頻繁に出演し、ウクライナ侵攻の戦況に関するコメントを続けている。
――ゼレンスキー氏は5月24日のNHKのインタビューで、「領土を2月24日以前の状態に戻したうえで、ロシアとの交渉のテーブルにつく」とも述べています。ドネツク、ルハンスク両州からなるドンバス地方の親ロ派支配地域や、ロシア側が支配するクリミア半島を取り戻すまでは戦いをやめるつもりはないということですか。
いいえ。大統領が言うように、中間的な状態があり得ます。2月の侵攻前の地点にロシア軍を押し戻した上で、ロシアに交渉を提案します。ここで、国境の外に軍を撤退させることを要求します。ドンバス地方や、クリミア半島からも出ていってもらいます。もしロシアが同意しないなら、戦いを続けます。
プーチン氏支える権力構造 少しずつ亀裂
――しかし、交渉によってロシア軍に出て行ってもらうというのは、本当にリアリティーのある話でしょうか。
もちろんあります。プーチン…

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